基礎から知りたい年金制度のしくみ~おさえておこう基礎知識

「年金」という言葉はよく耳にしますし、そんな制度があるということは誰もが知っていると思います。

しかし「まだ若いから関係ない」「仕組みがよくわからない」と思っている人も多いのではないでしょうか。

日本国民の誰もが加入しているものなので「自分には関係ない」は大間違い!
自分自身のために、年金制度のポイントはしっかりおさえておきましょう。

この記事では、公的年金制度の概要・しくみに関する基礎知識をまとめていきます。

2022年9月28日の日本経済新聞朝刊に「国民年金「5万円台」維持へ 厚労省、厚生年金で穴埋め」という記事がありました。「令和の年金大改悪」という文字も見かけます。
どういうことだろう?と思い記事を読んでみてわかったことは、その記事の内容ではなく、自分が年金制度のしくみについてよくわかっていないという現実だけ。

国民年金は全国民が加入しているし、会社員である筆者は厚生年金に加入しているのに、よくわからない状態で毎月何万円もの保険料を払っている…。
このままじゃ駄目だ!
そこで、基礎の基礎から、年金制度についてまとめていくことにしました。

そもそも公的年金制度とは?

国民皆年金!全国民が公的年金に加入

「公的年金制度」とは、国が運営する年金制度のことです。
日本では、20歳以上60歳未満の全ての国民が公的年金に加入することになっています。

年金制度はなんのためにあるのか

人生、いつなにが起こるかわかりません。予測することができない将来のリスクに対して、世代を超えて社会全体で備えるための仕組みが、公的年金制度です。

社会全体で対応することで、その時々の経済や社会の状況に応じた給付をすることができます。

3つのセーフティーネット

年金といえば「老後にもらえるもの」と思っている人も多いと思いますが、年金イコール老後ではありません

公的年金は3種類あります。

老齢年金 老後の生活保障。原則65歳から給付される。
障害年金 病気やけがで障害を負ったり働けなくなったときの生活保障。障害認定を受けた人に給付される。
遺族年金 死亡したときに遺された遺族のための生活保障。亡くなった被保険者の遺族に対して給付される。

公的年金制度は、親への「仕送り」!?

かつては親と同居して親を養う人が多かったのですが、時代とともに親と別居したり地元を出て都心で働く人が増えたことで、自分で自分の親を養うことが難しくなりました。

そこで、社会全体で高齢者を支える公的年金制度がはじまりました。

そういう背景もあり、年金制度は働く現役世代が収めた保険料をそのときの高齢者の年金給付に充てる仕組み(賦課方式)になっています。

公的年金は、自分の老後のために積み立てているわけではないのです!
現役世代の人が高齢者の生活を支えるイメージです。

公的年金はなぜ賦課方式?自分たちが払った分を将来の自分たちが受け取る「積立方式」の方が良いのでは?

お金の価値は時代とともに変化します。
たとえば、50年前は喫茶店のコーヒー1杯が71.5円でしたが、現代では512円と7.2倍にもなっています。(厚労省の資料より)
このように、物価が変わることでその金額の価値が変わるので、積立方式では将来受け取る年金がその時代のお金の価値と一致せず低くなってしまう可能性があります。
よって、賦課方式のほうが有利と言えるのです。

公的年金制度の仕組み

年金制度は3階建て、公的年金は2階建て

年金制度は「2階建て」とよく言いますが、ここ最近は「3階建て」と言われるようになりました。

公的年金は1・2階部分で、その上にさらに企業年金や個人年金があり3階建てとなっています。


<画像出典:公的年金制度について|厚生労働省 [pdf]

公的年金は2つある

3階建てのうち、1階・2階部分が公的年金です。

公的年金制度には「国民年金」「厚生年金」のふたつがあり、どちらの年金制度に加入しているかは職業によって異なります

厚生年金
  • 公務員や企業に勤める会社員など、厚生年金適用の組織に所属している人が加入する
  • 国民年金に上乗せされる形での保障
  • 保険料は会社と従業員が折半
国民年金

(基礎年金)

  • 20歳以上60歳未満のすべての国民が加入する
  • 国民年金の保険料は、年齢や性別を問わず一律

国民年金と厚生年金の違いについて、詳しくは別の記事で解説しています。

 

ちなみに、国民年金、厚生年金に上乗せすることができる年金が3階部分で「国民年金基金」「確定拠出年金」「企業年金」などがあります。

これらは企業や個人が任意で加入することができ、「私的年金」と呼ばれます。

 

被保険者の分類と保険料

公的年金制度に加入している本人のことを「被保険者」と呼びます。
この被保険者には3つの分類があります。これらは、働き方で分けられます。

分類 第1被保険者 第2被保険者 第3被保険者
年金制度 国民年金 厚生年金 国民年金
加入者 自営業者、農業従事者、学生、無職。第2・第3に該当しない配偶者など 会社員、公務員など 厚生年金に加入している第2号被保険者に扶養されている配偶者。(年収130万円未満)
年齢 20歳以上60歳未満 就職したときから退職まで 20歳以上60歳未満
保険料月額 一律16,590円(令和4年度の場合) 標準報酬月額による 負担なし

第1号被保険者

第1号被保険者は、自営業者や学生などが該当します。

加入するのは国民年金だけなので、厚生年金に加入している人に比べると給付が少なくなりますが、厚生年金に替わる「2階部分」として、「付加年金」や「国民年金基金」などに加入することもできます。

第2号被保険者

第2号被保険者は、会社員や公務員、一定条件を満たしたパート・アルバイトが該当します。

国民年金(基礎年金)に上乗せする形で厚生年金分が給付されるので、第1・第3被保険者と比べると給付が手厚くなります。

第3号被保険者

第3号被保険者は、第2号被保険者に扶養されている人(専業主婦・主夫など)が該当します。

これらの人は自分で保険料を支払うことはありません。扶養してくれている配偶者が加入している厚生年金で負担しています。(第2号被保険者全体で負担しているイメージです

ただし、被保険者が65歳を超えると扶養配偶者は第3号から第1号に変更となり、保険料も支払わなければなりません。

加入するのは国民年金だけなので、年金額は第1号被保険者と同じ水準です。

 

まとめ

ここまでが、年金制度の基礎となります。

おさえておきたいポイントは以下の3つです。

  • 20歳を過ぎたすべての国民が公的年金制度に加入している
  • 年金が給付されるのは老後だけではなく、病気やケガで障害を負ったときの障害年金、被保険者が死亡したときに残された遺族に給付される遺族年金の3つがある
  • 公的年金には「国民年金」と「厚生年金」の2種類があり、どちらに加入しているかは職業によって異なる

年金制度にもうすこし知識を深めていくために、気になることを今後も記事にまとめていきます。

・国民年金と厚生年金の違い
・現役世代が払う年金保険料はどのように使われているのか?
・老後にもらえる年金はいくら?確認方法は?
・ニュースで耳にする「マクロ経済スライド」って何?  など

基礎から知りたい年金制度のしくみシリーズ

 

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