今夏は全国的に電力需給が厳しい見通しで、連日、節電を呼びかける報道を耳にするようになりました。
2022年7月1日から9月30日まで、終日、家庭ではもちろんのこと、会社や事業所でも節電を求められています。
「無理のない範囲での節電」が呼びかけれていますが、事業所では「法律」も意識しないといけないということをご存知でしょうか?
労働者の安全と衛生の基準である「労働安全衛生規則基準値」に注意し、基準の範囲内で節電に努めることが必要です。
この記事では、事業所での節電の取り組み例と、労働安全衛生法にまつわる労働環境の注意点についてまとめています。
目次
企業における節電取り組みの例
職場での節電対策として代表的なものは、エアコン・照明の使用を控えることです。
下記のような行為が例として挙げられます。
- 照明を消す。または照明を間引き点灯する。
- 冷房を使う際、冷やしすぎずに温度設定を高めに設定する。(室温28度推奨)
節電対策としてこれらを行う際は、労働環境に関する法律である労働安全衛生法上の基準の範囲内で実施しなければならないことに注意が必要です。
労働環境に関する法律
労働安全衛生法
労働安全衛生法は、その名の通り、労働者の安全と衛生についての基準が定められた法律です。
職場での労働者の安全と健康を確保し、快適な職場環境の形成を促進する目的で制定されました。
詳しくはこちらの関連記事でまとめています。
労働安全衛生規則
労働安全衛生規則は、労働者の安全衛生に関する基準を定めた省令です。
労働安全衛生法で定められた原則を、より具体的な事項として定めています。
事務所衛生基準規則
事務所衛生基準規則とは、労働安全衛生法に基づいて事務作業に使用される事務所の労働環境基準を定めたものです。
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これらの基準に適合していない労働環境で労働災害が発生すると、事業者には罰則があります。(労働安全衛生法119条)
事務所衛生基準規則で定められている室温と照度
事務所衛生基準規則では、適正な労働環境として室温と照度の基準が定められています。
照度
事務所衛生基準規則では、作業ごとに適正な手元の照度が規定されています。
精密な作業 | 300ルクス以上 |
普通の作業 | 150ルクス以上 |
粗な作業 | 70ルクス以上 |
パソコン作業などのデスクワークは「普通の作業」にあたります。
節電のために照明を落とす場合は、適正な照度の範囲内でなければなりません。
照度計に比べると正確性は劣るかもしれませんが、照度計アプリを使えばスマホで手軽に照度を測ることができます。
室温
事務所衛生基準規則によると、労働環境の温度・湿度は下記に適合するよう努めなければならないとされています。
室温 | 17℃以上28℃以下 |
相対湿度 | 40%以上70%以下 |
節電対策として「28度設定」が推奨されていますよね。
ここで注意すべきなのは、エアコンの設定温度ではなく、室温を28度にすることが推奨されているということです。
エアコンの設定温度を28度にしても、必ずしも室温が28度になるわけではありません。
特にオフィスではパソコン等のOA機器から熱がでたり、換気のために窓を開けることで実際の室温が高くなることもあります。
室内でも熱中症をおこしてしまうことはもう周知の事実です。
節電に気をとられるあまりに、労働環境を悪くして健康を害してしまっては本末転倒です。
まさに「無理のない範囲で」柔軟な節電対策を実施することが大切ですね。
無理のない節電対策の例
無理のない範囲での節電として、下記の取り組みがおすすめです。
- 使用していない部屋、人がいない部屋の照明・空調を消す
- 空調のフィルター清掃を行う
- ブラインド・カーテン等を閉め、日射を遮る
- 長時間席を離れるときは、OA機器の電源を切る
過度な節電で従業員の体調や心身に負担をかけないよう、適切な節電を実施しましょう。
資源エネルギー庁の「省エネポータルサイト」では、省エネ・節電に関する情報や「でんき予報」が確認できます。
電力使用状況や供給量がひとめでわかるので、特に節電が求められる日等にはこまめに確認してみるのも良いかもしれません。
▶夏季の省エネ・節電にご協力ください | 省エネルギー政策について|省エネルギー・新エネルギー|資源エネルギー庁fa-external-link