会社には安全で快適な労働環境を整える義務がある!【労働安全衛生法】

労働者の安全と健康の確保、快適な職場環境の形成を目的とした法律があります。
「労働安全衛生法」といい、これにより事業者に様々なことが義務付けられ、違反した場合の罰則も設けられています。

この記事では、快適な職場環境で安全に働くために、事業者だけではなく、労働者側も知っておくべき「労働安全衛生法の基礎知識」について解説します。

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労働安全衛生法とは

労働安全衛生法は、一言でいうと「労働者の安全と健康を確保する」ための法律です。
細かく様々なことが規定されていますが、ここではポイントなる部分を取り上げて解説していきます。

労働安全衛生法の目的

  • 労働災害の防止のための危害防止基準の確立
  • 責任体制の明確化
  • 職場における労働者の安全と健康の確保
  • 快適な職場環境の形成を促進

事業者に求められること

  • 労働災害の防止のための最低基準を守る
  • 快適な職場環境の実現と労働条件の改善を通じて、労働者の安全と健康を確保する
  • 国が実施する労働災害の防止に関する施策に協力する

労働者に求められること

  • 労働災害を防止するために必要な事項を守る
  • 事業者が実施する労働災害の防止に関する措置に協力する

罰則規定

労働安全衛生法に違反した場合には罰則規定があり、「懲役」または「罰金」が科される可能性があります。

安全衛生に関する法体系

労働安全衛生法には、労働災害防止のために守らなければならない事項が規定されています。

具体的な事項については、政令や省令、告示等で示されています。

法律:国会の議決を経て制定される決まり
政令:法律をもとに内閣が定める命令
省令:各省の大臣が発した命令

 

  • 労働安全衛生法施行令(政令)
    • 労働安全衛生規則(省令)
    • ボイラー及び圧力容器安全規則
    • クレーン等安全規則
    • ゴンドラ安全規則
    • 有機溶剤中毒予防規則
    • 鉛中毒予防規則
    • 四アルキル鉛中毒予防規則
    • 特定化学物質障害予防規則
    • 高気圧作業安全衛生規則
    • 電離放射線障害防止規則
    • 酸素欠乏症等防止規則
    • 事務所衛生基準規則
    • 粉じん障害防止規則
    • 石綿障害予防規則
    • 機械等検定規則
    • 労働安全コンサルタント及び労働衛生コンサルタント規則
  • 労働安全衛生法関係手数料令(政令)

 

労働安全衛生法でおさえておきたいポイント

労働安全衛生法では職場の安全衛生確保のためにたくさんのことが規定されていますが、ここではポイントとなるものをいくつかピックアップして解説します。

管理者の配置義務

労働安全衛生法では、職場の安全衛生確保のために、事業場を一つの適用単位として、様々な役割をもった管理者・産業医を設置することが義務づけられています。(労働安全衛生法 第3章 安全衛生管理体制)

これらを選任しなかった場合の罰則規定も設けられています。

管理者の名称 役割 選任義務のある事業所
総括安全衛生管理者 安全管理者、衛生管理者を指揮させるとともに、労働者の危険または健康障害を防止するための措置等の業務を統括管理する 一定の業種で一定規模以上の労働者を使用する場合に選任が必要
安全管理者
安全衛生業務のうち、安全に係る技術的事項を管理する 常時50人以上の労働者を使用する一定の業種の事業場ごとに選任が必要
衛生管理者 安全衛生業務のうち、衛生に係る技術的事項を管理する ・常時50人以上の労働者を使用するすべての事業場で選任が必要
・事業場の規模ごとに選任しなければならない衛生管理者の数が異なる
安全衛生推進者、衛生推進者 労働者の安全や健康確保などに係わる業務を担当 ・常時10人以上50人未満の労働者を使用する事業場で選任
(安全管理者の選任対象外の業種では、安全衛生推進者に代わって衛生推進者を選任し、衛生にかかる業務を担当する)
産業医 専門家として労働者の健康管理その他の厚生労働省令で定める事項を行う ・常時50人以上の労働者を使用するすべての事業場で選任が必要
・常時3000人を超える労働者を使用する事業場では、2人以上の産業医を選任しなければならない

このほか、業種や事業規模等により必要に応じて以下のような人員を配置することが求められます。

  • 作業主任者
  • 統括安全衛生責任者
  • 元方安全衛生管理者
  • 店社安全衛生管理者
  • 安全衛生責任者
  • 安全委員会
  • 衛生委員会
  • 安全衛生委員会

労働者の危険・健康障害を防止する

労働者の危険や健康障害を防止するための措置をしなければなりません。(労働安全衛生法 第4章 労働者の危険又は健康障害を防止するための措置)

  • 事業者は、労働者を就業させる建設物その他の作業場について、通路、床面、階段等の保全並びに換気、採光、照明、保温、防湿、休養、避難及び清潔に必要な措置その他労働者の健康、風紀及び生命の保持のため必要な措置を講じなければならない。(第23条)
  • 事業者は、労働者の作業行動から生ずる労働災害を防止するため必要な措置を講じなければならない(第24条)

安全衛生教育の実施

事業者は、従業員を雇い入れた時や職務変更の際に、従業員に対して安全衛生教育を実施しなければなりません。(労働安全衛生法 第59条 第60条)

健康保持推進

事業者は、労働者の健康の保持増進のための措置をとることも義務付けられています。

  • 事業者は、労働者の健康に配慮して、労働者の従事する作業を適切に管理するように努めなければならない。(第65条の3)
  • 事業者は、労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による健康診断を行わなければならない。(第66条)

快適な職場環境の形成

事業者は、事業場における安全衛生の水準の向上を図るため、次の措置を継続的かつ計画的に講ずることにより、快適な職場環境を形成するように努めなければならないとされています(第71条の2)

  1. 作業環境を快適な状態に維持管理するための措置
  2. 労働者の従事する作業について、その方法を改善するための措置
  3. 作業に従事することによる労働者の疲労を回復するための施設又は設備の設置又は整備
  4. 前三号に掲げるもののほか、快適な職場環境を形成するため必要な措置

これら、快適な職場環境の形成のための措置に関しては、必要な指針を厚生労働大臣が公表するものとしています。
具体的な措置については、「労働安全衛生規則」「事務所衛生基準規則」などに規定されています。

まとめ

労働安全衛生法は、労働基準法と相まって労働災害を防止し、労働者の安全と健康を確保するとともに快適な職場環境を形成するために、様々なことが細かく規定されています。

事業者がこれを遵守するのは当然のことですが、労働者側もこの法律の存在を理解し、自ら快適な職場環境をつくる働きをしていくことが大切です。

記事内ではすべての項目について紹介しきれませんでしたので、ぜひ労働安全衛生法の内容を一読してみてください。

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