民法の改正が2017年6月に公布され、2020年4月1日に施行されます。
この改正で、[保証]に関わる民法の規定が大きく変わり、労務管理にも影響があります!
従業員と雇用契約を結ぶ際に「身元保証書」をとりかわしている会社は、必ずその内容を見直す必要があります。
目次
2020年民法改正により身元保証書がうける影響とは?
身元保証書とは?
「身元保証書」とは、会社が従業員と雇用契約を結ぶときに取り交わされることが多い契約書で、「従業員が入社後に、過失によって会社に損害を与えた場合に、会社に対して損害を賠償するということを本人に誓約させ、本人以外の身元保証人が連帯して賠償責任を負う」ことを保証するものです。
現行の身元保証書は、身元保証人が一体いくらの賠償を負うのかという具体的な金額が明記されていないことがほとんどだと思います。
極度額を定めない根保証契約は無効となる
改正される民法では、保証人が締結する保証契約のうち、極度額を定めない「根保証契約」は、原則として無効になります。
簡単に言うと、保証人となる時点では将来的にどれだけの債務が発生するのかが明確でなく
一体いくらの金額の債務を保証するのかが分からない契約。
根保証契約は、保証人が保証契約を締結する時点では、
いくらの債務を保証するのかという具体的な金額が確定していないために、
保証人が予想外の債務を負うことになった場合、破産してしまう可能性があります。
このような不測の事態から保証人を守るために、民法が改正されました。
身元保証人の賠償の上限額を定める必要がある
2020年4月以降は、損害賠償の上限金額(極度額)を定めていない契約を締結しても、
その契約は無効となり、いざというときに効力を発揮しないことになってしまいます。
効力のある有効な身元保証契約を結ぶためには、具体的な金額で極度額を定めなければなりません。
保証契約は、「書面または電磁的記録」でしなければ、その効力を生じないと定められているので
口頭ではなく、必ず身元保証書などの書面をもって契約しなければなりません。
fa-caret-right2020年4月から:身元保証人の賠償額の上限を決め、定める必要がある
賠償上限額の記載のない場合、その契約自体が無効となる
極度額(賠償責任上限額)はどう決める?
極度額の定め方や、その上限額については、法律による規制はありません。
極度額は、当事者の合意に委ねられていて、金額によって契約が無効になるということもありません。
ただし、実際に従業員が損害を起こした場合でも、企業の定めた金額が必ず支払われるわけではなく、最終的には裁判所の判断となるようです。
入社の段階で、その従業員が何か問題を起こしたときに負うべき損害賠償額を予測することはほぼ不可能だと思いますので、合理的な極度額を算出することは難しいですが、会社としてどう設定するか、検討が必要となります。
改正前に取り交わした身元保証書も無効になる?
身元保証書への極度額の記載は、改正民法施行日である2020年4月1日以降に入社する従業員から対応が必要です。
2020年4月1日以前に締結した身元保証契約(保証債務)については、効力は存続すると定められているので、過去にとりかわした身元保証書に極度額の記載がなくても、問題はありません。
が、実際に今後損害賠償を請求することになった場合、その損害のすべてを請求できるということではないかもしれません。
身元保証人を保護するという観点でいうと、裁判で無効と判断されるリスクはあるのかもしれませんね。
fa-link2020年4月1日から保証に関する民法のルールが大きく変わります:PDF