

規定の就業時間を過ぎて仕事をすることを、一般的に「残業」や「時間外労働」といいます。
残業をすると、残業代(残業手当・時間外手当)が支給されますね。
その残業代は、割増賃金が支払われるという認識の方が大多数だと思います。
しかし、実は 残業=必ずしも割増賃金が支払われるわけではなく、割増賃金が支払われる残業と割増賃金がでない残業(割増ではなく通常の賃金が支給される)があるのです。
これを判断するときにキーになるのが「法定労働時間」です。
この記事では、労働時間と時間外労働に関する基礎知識、割増賃金が支払われる条件についてわかりやすく解説していきます。
目次
時間外労働について知るためには、まずは「法定労働時間」について理解していなければなりません。
労働時間の上限は、労働基準法によって定められています。
法定労働時間とは
法定労働時間を超えて働くことを「法定時間外労働」といいます。
法定労働時間を超えて働くと、会社は労働者へ割増賃金を支払わなければなりません。
法定労働時間と似た言葉で「所定労働時間」というものがあります。
所定労働時間とは、法定労働時間の範囲内で会社が定める労働時間です。
8時~17時であったり、9時~17時であったりと会社によって様々です。
所定労働時間とは
たとえば、所定労働時間が9時~17時の7時間勤務(1時間休憩)だとして、9時~18時まで8時間働いた場合、17時~18時までの1時間は所定時間外労働(いわゆる残業)をしたことになります。
この場合は、残業はしていますが 法定労働時間(1日8時間)内には収まっているので、法律上、割増賃金の支給は必要ありません。
※もちろん、割増しではない通常の賃金は、残業をした1時間分支払われなければなりません。
もうひとつの例えとして、所定労働時間が8時~17時の8時間勤務(1時間休憩)で、完全週休二日制の会社の場合だと、所定労働時間が1日8時間・週40時間で法定労働時間と同じになります。8時~18時まで9時間働いたとしたら、17時~18時までの1時間は法定時間外労働となり、125%の割増賃金が支払われることになります。
この記事の冒頭で、割増賃金が支給される残業と、割増賃金がでない残業があると言いました。
その違いは、その残業が「法定労働時間を超えているか否か」です。
一般的に「残業」というと、会社が定めた勤務時間を超えて働くことを表しますが、法律上の「時間外労働」とは、法定労働時間を超えて働く時間のことを意味します。
ひとくちに「残業」といっても、「法定内残業」と「法定外残業」の2つに分けられます。
法定内残業 |
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法定外残業 Ⅱ 法定時間外労働 |
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法定時間外労働をしたときに支払われる割増賃金には3種類あり、それぞれに割増率の最低ラインが定められています。
種類 | 支払条件 | 割増賃金率 |
時間外労働 (時間外手当・残業手当) | 法定労働時間を超えて働いたとき(1か月45時間以内) | 25%以上 |
時間外労働の限度時間(1か月45時間・年360時間)を超えたとき | 25%以上(25%を超える努力義務) | |
1か月60時間を超えて働いたとき | 50%以上(*) | |
休日労働(休日手当) | 法定休日に働いたとき | 35%以上 |
深夜労働(深夜手当) | 22時~5時の間に働いたとき | 25%以上 |
(*)中小企業は2023年4月1日よりこの割増率が適用となります。
詳しくはこちらの記事で解説しています。
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法定労働時間を超えて、時間外労働(残業)をさせるためには、労使の合意に基づく所定の手続き(36協定の締結・労働基準監督署への届出)が必要です。
この36協定を結んだとしても、無限に残業をさせて良いわけではなく、時間外労働の上限が罰則付きで法律で決まっています。
時間外労働の上限
所定労働時間と法定労働時間は、似ている名称ですが全く性質の異なるものなので、混同しないように注意が必要です。
一般的にいう「残業」と、法律上の「時間外労働」をしっかりと分けて理解することが重要です。