


フレックスタイム制には、一定の条件下において、まったく残業をしていないにも関わらず時間外労働となってしまうケースがあり、これに気付かずに運用を続けることで法令違反となってしまうという落とし穴があります。
この落とし穴を回避するための特例「完全週休二日制の特例」について解説します。
目次
フレックスタイム制では、日々の労働時間を労働者が自分で決めることができるので、1日8時間・週40時間という法定労働時間を超えて働いたとしても、ただちに時間外労働とはなりません。
フレックスタイム制では、清算期間における実労働時間のうち、清算期間における法定労働時間の総枠1を超えた時間が時間外労働2となります。
フレックスタイム制の基礎知識についてはこちらの記事をご覧ください。

清算期間における法定労働時間の総枠は、清算期間全体での法定労働時間のことです。
法定労働時間の総枠 = 1週間の法定労働時間* × 清算期間の暦日数 ÷ 7
* 1週間の法定労働時間は、原則として40時間です。(労働基準法第32条第1項)
例えば、清算期間の暦日数が30日の場合は、法定労働時間の総枠は「40時間×30日÷7」で171.4時間となります。
ですので、清算期間内に171.4時間を超えて労働した場合は、超えた分が時間外労働となり、超過時間分の割増賃金の支払いが必要ということになります。
1日8時間の労働でも、曜日の巡りによって清算期間における総労働時間が法定労働時間の総枠を超えてしまうと、残業をしていなくても時間外労働が発生します。
清算期間における総労働時間とは、労働契約に基づき、清算期間において労働すべき時間として定められた所定労働時間をいいます。(たとえば、1日8時間労働の事業所では、8時間×所定労働日数です。)
所定労働時間は法定労働時間を超えて定めることはできないので、総労働時間(所定労働時間)は、法定労働時間の総枠を超えて定めることはできません。
言葉だけだとわかりづらいので、具体的な例をあげて図で解説します。
<土・日・祝日を休日とする完全週休2日制>
暦日数:30日
所定労働日数:22日
1日の所定労働時間:8時間
| 月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 | 日 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 |
| 8 | 9 | 10 | 11 | 12 | 13 | 14 |
| 15 | 16 | 17 | 18 | 19 | 20 | 21 |
| 22 | 23 | 24 | 25 | 26 | 27 | 28 |
| 29 | 30 |
完全週休2日制の事業場でこのようなカレンダーの場合、総労働時間(所定)と法定労働時間の総枠は以下のようになります。
清算期間の総労働時間(所定労働時間)=176時間(8時間×22日)
法定労働時間の総枠=171.4時間(40時間×30日÷7日)
おわかりいただけたでしょうか?
176時間の労働が所定の総労働時間になりますが、法定労働時間の総枠はそれよりも少ない171.4時間なので、残業を一切しなくても4.6時間が時間外労働になってしまうのです。
前述したように、完全週休二日制の事業所でフレックスタイム制を導入した場合に、1日8時間相当の労働であっても、曜日の巡りによって、清算期間における総労働時間が、法定労働時間の総枠を超えてしまう場合がありました。
この計算の不都合を解消するために、完全週休二日制の特例があります。(労働基準法第32条の3第3項)
労使協定を締結することで、この特例により「清算期間内の所定労働日数×8時間」を労働時間の限度とすることができるようになります。
先述のカレンダーで言うと、清算期間の総労働時間(所定労働時間)である176時間(8時間×22日)を労働時間の上限とすることができるということです。
=週の労働時間が「清算期間内の所定労働日数×1日の標準労働時間」を超えた部分が時間外労働となります。
完全週休二日制の特例により、法定労働時間の総枠を「清算期間内の所定労働日数×8時間」とすることができ、完全週休2日制の事業場において残業のない働き方をした場合に、曜日の巡りによって想定外の時間外労働が発生するという不都合が解消されます。
尚、完全週休2日制とは、毎週必ず2日間の所定休日が定められている制度です。詳しくはこちらの記事で解説しています。

完全週休二日制の特例を適用するためには、完全週休2日制の事業場であることと、労使協定の締結が必要です。(労働基準法第32条の3第3項)
「完全週休2日制の特例」は、フレックスタイム制を導入している完全週休2日制の事業所で、曜日の巡りによって、残業をしていないにも関わらず法定労働時間を超えてしまう問題を解決するための特例で、労使協定により「清算期間内の所定労働日数×8時間」を労働時間の上限にすることができます。
これにより、所定労働日数が少ない月でも法定労働時間の上限が調整され、曜日の巡りによって想定外の時間外労働が発生するという不都合が解消されます。