

退職してから次の仕事が決まるまでの間の経済的な不安を解消してくれる公的保険制度があります。
それは、雇用保険被保険者が受給できる基本手当(失業保険・失業手当とも呼ばれます)です。
制度のしくみについてまとめます。
目次
雇用保険の被保険者が定年・倒産・契約期間の満了等により離職したときに、失業中の生活を心配せずに新しい仕事探しをすることで、1日も早く再就職できるよう支援する目的で支給されるのが、雇用保険の「求職者給付」です。
求職者給付の中で一般被保険者に対する給付が「基本手当(いわゆる失業給付)」で、一般的に「失業保険」と呼ばれることも多いです。
自己都合、会社都合、定年退職、どの理由での退職でも受給対象となりますが、給付を受けるには一定の要件を満たしていなければならず、住所地を管轄するハローワークでの手続きが必要です。
雇用保険の被保険者が離職して、以下のどちらもあてはまる場合に支給されます。
原則として4週間に1回、ハローワークに行って失業の認定(受給資格の確認)を受けなければなりません。
基本手当を含む求職者給付は、再就職を支援する制度なので、家事に専念する人や学業に専念する人、すでに次の就職が決まっている人等は給付を受けられません。
再就職をめざしている場合でも、すぐに働けない状態の人は給付を受けられません。
CHECK
すぐに就職することができないときは、基本手当を受給できません。
「すぐに働きたいという意思があって就職活動をしている」ことが大前提です。
雇用保険の受給期間は、原則として離職日の翌日から1年間(所定給付日数330日の方は1年と30日、360日の方は1年と60日)です。
雇用保険の基本手当の給付日数は、離職日の年齢、雇用保険の被保険者だった期間、離職の理由、就職困難者かどうか等によって、90日~360日の間で決まります。これを所定給付日数といいます。
失業給付金の対象者は、離職時の状況等により、おもに3つに分類されます。
自己都合による退職等、自分の意思で離職した人のことです。定年、契約満了での退職者もこれに含まれます。
被保険者だった期間(離職時の年齢が満65歳未満) | ||
10年未満 | 10年以上20年未満 | 20年以上 |
90日 | 120日 | 150日 |
勤続年数(被保険者であった期間)によって給付日数が異なり、最長で150日となります。
身体障害者、知的障害者、精神障害者、刑法等の規定により保護観察に付された方、社会的事情により就職が著しく阻害されている方等が該当します。
倒産・解雇(自己の責めに帰すべき重大な理由による解雇を除く)・事業主の法令違等(職場でのいじめやハラスメント、不利益な取扱いをされた場合も含む)により、離職を余儀なくされたと判断された方のことです。
特定受給資格者に該当するかは、定められた基準に沿って判断されます。
再就職の準備をする時間的余裕なく離職を余儀なくされたということで、一般の離職者よりも手厚い給付日数となる場合があり、給付制限期間がありません。
期間の定めのある労働契約が更新されなかったために離職した場合や、病気や親の介護等のやむを得ない理由で自己都合退職をした人が該当します。
特定理由離職者のもっと詳しい要件は下記の通りです。
給付日数は一般の離職者と同じ(一部は特定受給資格者と同じ)で、3ヵ月の給付制限期間はありません。
受給期間の間に病気、けが、妊娠、出産、育児等の理由で引き続き30日以上働くことができなくなったときは、その働くことのできなくなった日数分だけ、受給期間を延長することができます(最長で3年間)。
この措置を受けようとする場合はハローワークに申請が必要です。
基本手当は、離職票を提出して求職申し込みをしてから、待期期間が経過したあとに支給開始となります。
離職理由によっては、待機期間のあとに給付制限期間を経過した後に支給開始となります。
離職票の提出と求職の申込みを行った日(受給資格決定日)から通算して7日間を待期期間といい、その期間が満了するまでは雇用保険の基本手当は支給されません。
これは、離職の理由等にかかわらず、一律に適用されます。
7日間の待期期間の満了後に、一定の期間、雇用保険の基本手当の支給が行われない場合があり、これを給付制限期間と言います。
給付制限が行われる理由として主なものは以下の通りです。
離職日からさかのぼって5年間のうちに2回以上正当な理由なく自己都合退職し受給資格決定を受けた場合または懲戒解雇された場合、給付制限期間は3ヵ月となります。
ちなみに、実際に雇用保険の基本手当として初めて現金が振り込まれるのは、給付制限がなくても、ハローワークで求職の申込みをしてから約1か月後(初回認定日の約1週間後)です。
※2025年4月から、自己都合退職で雇用保険の失業等給付を受給する場合の給付制限期間が、 2ヵ月間から 1ヵ月間に短縮され、その分早く失業保険の給付が受けられることになりました。
自己都合で離職した人で、下記のいずれかに当てはまる教育訓練等を離職の日1年以内に受けた または 離職の日以後に受けている場合は、当該訓練を受ける期間と受け終わった後の期間について給付制限が解除されます。
詳しくは下記の記事でも解説しています。
基本手当日額(1日当たりの受給金額)は、原則として離職日の直前の6か月に毎月きまって支払われた賃金(賞与等は除く)の合計を180で割って算出した金額(賃金日額)のおよそ50~80%(*60歳~64歳については45~80%)となり、賃金の低い方ほど率が高くなります。
基本手当日額=(離職前6か月の賃金の合計÷180)×給付率(50~80%(*))
給付率の計算方法は複雑なので、ここでは割愛します。詳しく知りたい方はハローワークに問合せるのが良いと思います。
基本手当日額は年齢区分ごとにその上限額・下限額が定められています。
▼基本手当日額上限(令和7年8月1日現在)
30歳未満 | 7,255円 |
30歳以上45歳未満 | 8,055円 |
45歳以上60歳未満 | 8,870円 |
60歳以上65歳未満 | 7,623円 |
偽りや不正行為によって基本手当等を受けたり、受けようとした場合には、以後これらの給付を一切受けることができなくなるだけでなく、もちろん不正受給した分の返還をしなくてはなりません。
更に、返還を命じられた不正受給金額とは別に、直接不正の行為により支給を受けた額の2倍に相当する額以下の金額の納付を命ぜられることとなります。(いわゆる「3倍返し」というやつです。)
「バレないでしょ」という謎の自信での不正行為は絶対にやめましょう。
どういう行為が不正にあたるのか、少し例をあげます。
CHECK!不正受給の例
あくまでも「すぐに働く意思があり、働ける状態であること」が前提の給付制度です。
退職後の就活中は、再就職が決まるまでの生活費等、なにかと不安になりますが 失業給付があれば心強いですよね。