

退職してから次の仕事が決まるまでの間の経済的な不安を解消してくれる公的保険制度があります。
それは、雇用保険被保険者が受給できる 基本手当(失業保険・失業手当とも呼ばれます)です。
制度のしくみについてまとめます。
雇用保険の被保険者が定年・倒産・契約期間の満了等により離職したときに、失業中の生活を心配せずに新しい仕事探しをすることで、1日も早く再就職できるよう支援する目的で支給されるのが、雇用保険の「基本手当(いわゆる失業給付)」です。一般的に「失業保険」と呼ばれることも多いです。
自己都合、会社都合、定年退職、どの理由での退職でも受給対象となりますが、給付金を受けるには一定の要件を満たしていなければならず、住所地を管轄するハローワークでの手続きが必要です。
雇用保険の被保険者が離職して、以下のどちらもあてはまる場合に支給されます。
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すぐに就職することができないときは、基本手当を受給できません。
雇用保険の基本手当の給付日数は、離職日の年齢、雇用保険の被保険者だった期間、離職の理由、就職困難者かどうか等によって、90日~360日の間で決まります。これを所定給付日数といいます。
失業給付金の対象者は、離職時の状況等により、おもに3つに分類されます。
被保険者だった期間 | ||
10年未満 | 10年以上20年未満 | 20年以上 |
90日 | 120日 | 150日 |
勤続年数(被保険者であった期間)によって給付日数が異なり、最長で150日となります。
被保険者だった期間 | |||
1年未満 | 1年以上 | ||
離職時の年齢 | 45歳未満 | 150日 | 300日 |
45歳~65歳未満 | 360日 |
被保険者だった期間 | ||||||
1年未満 | 1年以上5年未満 | 5年以上10年未満 | 10年以上20年未満 | 20年以上 | ||
離 職 時 の 年 齢 | 30歳未満 | 90日 | 90日 | 120日 | 180日 | ― |
30~34歳 | 120日 | 180日 | 210日 | 240日 | ||
35~44歳 | 150日 | 240日 | 270日 | |||
45~59歳 | 180日 | 240日 | 270日 | 330日 | ||
60~64歳 | 150日 | 180日 | 210日 | 240日 |
再就職の準備をする時間的余裕なく離職を余儀なくされたということで、一般の離職者よりも手厚い給付日数となる場合があり、3か月の給付制限期間がありません。
給付日数は一般の離職者と同じ(一部は特定受給資格者と同じ)で、3ヵ月の給付制限期間はありません。
受給期間の間に病気、けが、妊娠、出産、育児等の理由で引き続き30日以上働くことができなくなったときは、その働くことのできなくなった日数分だけ、受給期間を延長することができます(最長で3年間)。
この措置を受けようとする場合はハローワークに申請が必要です。
雇用保険の基本手当は、離職票の提出と求職の申込みを行った日(受給資格決定日)から通算して7日間を待期期間といい、その期間が満了するまでは雇用保険の基本手当は支給されません。
これは、離職の理由等にかかわらず、一律に適用されます。
さらに、待期期間の満了後に一定の期間、雇用保険の基本手当の支給が行われない場合があり、これを給付制限と言います。
給付制限が行われる理由として主なものは以下の通りです。
ちなみに、実際に雇用保険の基本手当として初めて現金が振り込まれるのは、給付制限がなくても、ハローワークで求職の申込みをしてから約1か月後(初回認定日の約1週間後)です。
※2020年10月から、自己都合退職で雇用保険の失業等給付を受給する場合の給付制限期間が、 3ヵ月間から 2ヵ月間に変更となります。
この期間が短縮されるということは、その分早く失業保険の給付が受けられるということです。
基本手当日額(1日当たりの受給金額)は、原則として離職日の直前の6か月に毎月きまって支払われた賃金(賞与等は除く)の合計を180で割って算出した金額(賃金日額)のおよそ50~80%(60歳~64歳については45~80%)となり、賃金の低い方ほど率が高くなります。率の計算方法は複雑なので、ここでは割愛します。詳しく知りたい方はハローワークに問合せるのが良いと思います。
基本手当日額は年齢区分ごとにその上限額が定められています。
▼基本手当日額上限(令和2年7月15日現在)
30歳未満 | 6,815円 |
30歳以上45歳未満 | 7,570円 |
45歳以上60歳未満 | 8,330円 |
60歳以上65歳未満 | 7,150円 |
偽りや不正行為によって基本手当等を受けたり、受けようとした場合には、以後これらの給付を一切受けることができなくなるだけでなく、もちろん不正受給した分の返還をしなくてはなりません。
更に、返還を命じられた不正受給金額とは別に、直接不正の行為により支給を受けた額の2倍に相当する額以下の金額の納付を命ぜられることとなります。(いわゆる「3倍返し」というやつです。)
「バレないでしょ」という謎の自信での不正行為は絶対にやめましょう。
どういう行為が不正にあたるのか、少し例をあげます。
fa-check-square-oCHECK 不正受給の例
あくまでも「すぐに働く意思があり、働ける状態であること」が前提の給付制度です。
退職後の就活中は、再就職が決まるまでの生活費等、なにかと不安になりますが 失業給付があれば心強いですよね。