退職後の心強い味方~雇用保険の基本手当(失業給付)の基礎知識

退職してから次の仕事が決まるまでの間の経済的な不安を解消してくれる公的保険制度があります。
それは、雇用保険被保険者が受給できる 基本手当失業保険・失業手当とも呼ばれます)です。
制度のしくみについてまとめます。

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雇用保険の基本手当とは?

雇用保険の被保険者が定年・倒産・契約期間の満了等により離職したときに、失業中の生活を心配せずに新しい仕事探しをすることで、1日も早く再就職できるよう支援する目的で支給されるのが、雇用保険の「基本手当(いわゆる失業給付)」です。一般的に「失業保険」と呼ばれることも多いです。

自己都合、会社都合、定年退職、どの理由での退職でも受給対象となりますが、給付金を受けるには一定の要件を満たしていなければならず、住所地を管轄するハローワークでの手続きが必要です。

支給条件

雇用保険の被保険者が離職して、以下のどちらもあてはまる場合に支給されます。

  1. ハローワークに来所し、求職の申込みを行い、就職しようとする積極的な意思があり、いつでも就職できる能力があるにもかかわらず、本人やハローワークの努力によっても、職業に就くことができない失業の状態にある
  2. 離職の日以前の2年間に、被保険者期間が通算して12か月以上ある
    ※ただし、特定受給資格者・特定理由離職者(後で詳しく触れます)は、離職の日以前1年間に、被保険者期間が通算して6か月以上ある場合でも可

原則として4週間に1回、ハローワークに行って失業の認定(受給資格の確認)を受けなければなりません。

 

CHECK

すぐに就職することができないときは、基本手当を受給できません

  • 病気やけがのため、すぐには就職できないとき
  • 妊娠・出産・育児のため、すぐには就職できないとき
  • 定年などで退職して、しばらく休養しようと思っているとき
  • 結婚などにより家事に専念し、すぐに就職することができないとき など

「すぐに働きたいという意思があって就職活動をしている」ことが大前提です。

所定給付日数

給付日数の決まり方

雇用保険の基本手当の給付日数は、離職日の年齢、雇用保険の被保険者だった期間、離職の理由、就職困難者かどうか等によって、90日~360日の間で決まります。これを所定給付日数といいます。

 

失業給付金の対象者は、離職時の状況等により、おもに3つに分類されます。

一般の離職者
一般の離職者とは?
自己都合による退職等、自分の意思で離職した人のことです。
被保険者だった期間
10年未満 10年以上20年未満 20年以上
90日 120日 150日

勤続年数(被保険者であった期間)によって給付日数が異なり、最長で150日となります。

就職困難者
就職困難者とは?
身体障害者、知的障害者、精神障害者、刑法等の規定により保護観察に付された方、社会的事情により就職が著しく阻害されている方等が該当します。
被保険者だった期間
1年未満 1年以上
離職時の年齢 45歳未満 150日 300日
45歳~65歳未満 360日
特定受給資格者
特定受給資格者とは?
倒産・解雇(自己の責めに帰すべき重大な理由による解雇を除く)・事業主の法令違等(職場でのいじめやハラスメント、不利益な取扱いをされた場合も含む)により、離職を余儀なくされたと判断された方のことです。特定受給資格者に該当するかは、定められた基準に沿って判断されます。
被保険者だった期間
1年未満 1年以上5年未満 5年以上10年未満 10年以上20年未満 20年以上

30歳未満 90日 90日 120日 180日
30~34歳 120日 180日 210日 240日
35~44歳 150日 240日 270日
45~59歳 180日 240日 270日 330日
60~64歳 150日 180日 210日 240日

再就職の準備をする時間的余裕なく離職を余儀なくされたということで、一般の離職者よりも手厚い給付日数となる場合があり、3か月の給付制限期間がありません。

 

特定理由離職者
特定理由離職者とは?
期間の定めのある労働契約が更新されなかったために離職した場合や、病気や親の介護等のやむを得ない理由で自己都合退職をした人が該当します。
もっと詳しい要件は下記の通りです。
  1. 期間の定めのある労働契約の期間が満了し、当該労働契約の更新がないことにより離職した者(本人が更新を希望したにもかかわらず、更新されなかった場合に限る。)
  2. 正当な理由のある自己都合により離職した者
    ・体力の不足、心身の障害、疾病、負傷、視力の減退等の健康面の問題があった者
    ・妊娠、出産、育児等により離職し、受給期間延長措置を受けた者
    家庭の事情が急変したことで離職した者(介護を必要とする親族の疾病、負傷等)
    ・配偶者又は扶養すべき親族と別居生活を続けることが困難となったことにより離職した者(単身赴任を解消したい場合等)
    ・結婚に伴う引っ越しや、事業所の移転によって通勤が困難となり離職した者
    ・転勤や出向等による別居の回避のために離職した者 など

給付日数は一般の離職者と同じ(一部は特定受給資格者と同じ)で、3ヵ月の給付制限期間はありません。

特別な事情があれば延長できます

受給期間の間に病気、けが、妊娠、出産、育児等の理由で引き続き30日以上働くことができなくなったときは、その働くことのできなくなった日数分だけ、受給期間を延長することができます(最長で3年間)。

この措置を受けようとする場合はハローワークに申請が必要です。

 

待機期間とは?

雇用保険の基本手当は、離職票の提出と求職の申込みを行った日(受給資格決定日)から通算して7日間待期期間といい、その期間が満了するまでは雇用保険の基本手当は支給されません。
これは、離職の理由等にかかわらず、一律に適用されます。

さらに、待期期間の満了後に一定の期間、雇用保険の基本手当の支給が行われない場合があり、これを給付制限と言います。

 

給付制限が行われる理由として主なものは以下の通りです。

  1. 離職理由による給付制限
    正当な理由なく自己都合により退職した場合及び自己の責めに帰すべき重大な理由によって解雇された(いわゆる重責解雇)場合は、待期期間終了後、更に3か月間の給付制限があります。
  2. 紹介拒否等による給付制限
    受給資格者が、ハローワークからの職業の紹介や指示された公共職業訓練等を正当な理由なく拒んだ場合、その拒んだ日から起算して1か月間は雇用保険の基本手当が支給されません。再就職を促進するために必要な職業指導を正当な理由なく拒んだ場合も同様です。

 

ちなみに、実際に雇用保険の基本手当として初めて現金が振り込まれるのは、給付制限がなくても、ハローワークで求職の申込みをしてから約1か月後(初回認定日の約1週間後)です。

 

※2020年10月から、自己都合退職で雇用保険の失業等給付を受給する場合の給付制限期間が、 3ヵ月間から 2ヵ月間に変更となります。

この期間が短縮されるということは、その分早く失業保険の給付が受けられるということです。

 

支給額

基本手当日額(1日当たりの受給金額)は、原則として離職日の直前の6か月に毎月きまって支払われた賃金(賞与等は除く)の合計を180で割って算出した金額(賃金日額)のおよそ50~80%(60歳~64歳については45~80%)となり、賃金の低い方ほど率が高くなります。率の計算方法は複雑なので、ここでは割愛します。詳しく知りたい方はハローワークに問合せるのが良いと思います。

基本手当日額は年齢区分ごとにその上限額が定められています。

 

▼基本手当日額上限(令和2年7月15日現在)

30歳未満 6,815円
30歳以上45歳未満 7,570円
45歳以上60歳未満 8,330円
60歳以上65歳未満 7,150円

 

不正受給をするとどうなる?

偽りや不正行為によって基本手当等を受けたり、受けようとした場合には、以後これらの給付を一切受けることができなくなるだけでなく、もちろん不正受給した分の返還をしなくてはなりません。

更に、返還を命じられた不正受給金額とは別に、直接不正の行為により支給を受けた額の2倍に相当する額以下の金額の納付を命ぜられることとなります。(いわゆる「3倍返し」というやつです。)

「バレないでしょ」という謎の自信での不正行為は絶対にやめましょう。

どういう行為が不正にあたるのか、少し例をあげます。

 

CHECK 不正受給の例

  • 実際には求職活動をしていないのに「失業認定申告書」に嘘の実績を書いて申告し、求職活動をしているように見せかける
  • 就職や就労(パート、アルバイト、派遣、日雇、自営や請負などを含む)をしたにもかかわらず、その事実を申告しなかった
  • 定年後、再就職する意思やいつでも就職できる能力がなく、しばらく失業給付を受けたあとに年金を受給しようと考えている者が、「失業認定申告書」により偽りの申告を行った など

 

あくまでも「すぐに働く意思があり、働ける状態であること」が前提の給付制度です。

退職後の就活中は、再就職が決まるまでの生活費等、なにかと不安になりますが 失業給付があれば心強いですよね。

 

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