高額療養費制度~医療費が高額になっても全額支払わなくても良い!?

日本では国民皆保険制度のもと、誰もが何かしらの公的医療保険に加入しています。

 

公的医療保険の種類について知りたい方は、こちらの関連記事をご参照ください。

 

この記事では、医療費が高額になったときのために絶対に知っておくべき制度、「高額療養費制度」についてまとめます。

PR

医療費は全額自己負担ではない

病気やけがで病院に行くと、実際にかかった医療費の3割負担(年齢や所得によっては1~2割負担)で診察をうけることができます。
これは、日本では国民皆保険制度によって 国民全員が公的医療保険に加入しているからなのです。

余談ですが、この制度のおかげで日本では誰もが風邪などの軽い病気にかかったときでも、気軽に病院に行って治療を受けることができます。
外国では医療費が高く、病気になっても気軽に病院に行けない国もあります。

医療費が高額になったときに心強い「高額療養費制度」

高額療養費制度とは

医療費が原則3割負担(年齢や所得によっては1~2割負担)だとは言っても、大きな病気やケガで手術したり入院したりすると、医療費が高額になります。

そんなときでもお金の心配なく必要な医療を受けることができるように「高額療養費制度」というものがあります。

「高額療養費制度」は、その名の通り、医療費が高額になったときに頼りになる、心強い救済制度です。

高額療養費制度とは
高額療養費とは、同一月(1日から月末まで)にかかった医療費の自己負担額が高額になった(限度額を超えた)場合に、一定の金額(自己負担限度額を超えた分)があとで払い戻されるという制度です。

つまり、どんなに医療費が高額になったとしても、最終的に自己負担するのは、この高額療養費制度で定められた自己負担限度額までということです。

自己負担限度額とは

自己負担限度額は、年齢および所得区分によって設定されています。

●70歳未満の方の場合

所得区分 外来・入院ごと(3回目まで) 4回目以降(多数該当)
標準報酬月額83万円以上 252,600円+(医療費-842,000円)×1% 140,100円
標準報酬月額53万~79万円 167,400円+(医療費-558,000円)×1% 93,000円
標準報酬月額28万~50万円 80,100円+(医療費-267,000円)×1% 44,400円
標準報酬月額26万円以下 57,600円 44,400円
住民税非課税世帯 35,400円 24,600円

高額の負担がすでに年3月以上ある場合の4月目以降を「多数該当高額療養費」と言います。
高額療養費として払い戻しを受けた月数が1年間(直近12ヵ月間)で3月以上あったときは、4月目(4回目)から自己負担限度額がさらに引き下げられます。

例えば、標準報酬月額が20万円の人の場合、仮にひと月の医療費が100万円かかったとしても、実際に自己負担する医療費は「57,600円」までで済むということです。

加入している健康保険組合(主に大企業にお勤めの方の健康保険)によっては、独自の付加給付によって自己負担限度額がさらに低く設定されている(自己負担額がもっと安くすむ)場合もあります。

 

標準報酬月額って何?という方は、こちらの関連記事をご参照ください。

 

●70歳以上の方の場合

所得区分 外来特例
(個人)
限度額(世帯)
現役並み所得 Ⅲ
(標準報酬月額83万円以上、課税所得690万円以上)
廃止 252,600円+(医療費-842,000円)×1%
<多数回該当:140,100円>
現役並み所得 Ⅱ
(標準報酬月額53万以上79万円以下、課税所得380万円以上)
167,400円+(医療費-558,000円)×1%
<多数回該当:93,000円>
現役並み所得 Ⅰ
(標準報酬月額28万以上50万円以下、課税所得145万円以上(※))
80,100円+(医療費-267,000円)×1%
<多数回該当:44,400円>
一般
(標準報酬月額26万円以下、課税所得145万円未満)
18,000円 57,600円
<多数回該当:44,400円>
低所得者 Ⅱ 8,000円 24,600円
低所得者 Ⅰ 15,000円

対象となる期間についての注意点

高額療養費の対象となる期間は、同一月の1日から末日までの1ヶ月間です。
長期入院等で月をまたいだ場合でも、それぞれの月で限度額を計算し、月毎の申請が必要です。
1回の入院単位ではなく、あくまでも月単位となります。

月をまたいで入院すると損!?

高額療養費制度の対象となる期間は、同一月の1日から末日までの1ヶ月間です。
ここでいう1ヵ月間とは、歴月単位という意味なので「月またぎの入院は損」と言われます。

例えば、収入が全く同じAさんとBさんがいて、2人とも同じ病気で入院し、入院日数も同じく20日間だと仮定します。
異なるのは月をまたいだ入院か否かということだけ。
4月5日~4月24日まで入院したAさんと
4月20日~5月9日までと 月をまたいで入院したBさんとでは、自己負担額に差がでます。

どういうことかというと、
Aさんは4月の医療費が自己負担限度額の57,600円で済みます。
Bさんの場合は、かかった医療費が4月分と5月分に分かれてしまうため、4月の医療費が自己負担限度額の57,600円、5月の医療費が自己負担限度額の57,600円となり、ひと月内で収まったA子さんと比べ、自己負担額が多くなってしまうのです。
全く同じ治療を受け、まったく同じ請求額であったとしても、です。
ですので、入退院するタイミングによって、損をしたように感じる場合もあるということです。

申請のタイミングは医療費支払前・支払後の2パターン

高額療養費制度を利用する際は、自分が加入している健康保険(公的医療保険)に申請書を提出します。

高額療養費の申請方法とタイミングは、2つのパターンに分けることができます。

1医療費を支払った後に手続きをする場合:高額療養費を支給申請する

医療費を先に支払い、あとから支給申請する場合の流れは以下のようになります。

  1. 病院へ医療費の自己負担分3割を支払う
  2. 加入している健康保険に高額療養費の申請をする
  3. 申請が認められれば(3ヶ月を目途)、限度額を超えた分が払い戻される

2医療費が高額になりそうなときに事前に手続きをする場合:「限度額適用認定証」を利用する

医療費が高額になりそうなのが事前にわかっている場合には、事前に「限度額適用認定証」を申請することで、病院の窓口での支払額を支払限度額までに抑えることができます。

  1. 加入している健康保険へ限度額適用認定証の発行を申請する
  2.  申請が認められると、限度額適用認定証が交付される
  3. 病院での支払いの際に、限度額適用認定証を提出する(支払額は年齢、所得区分に応じた限度額が上限となる)

 

どちらの申請方法でも、最終的な自己負担額は同じですが、あらかじめ入院や手術の予定が決まっている人は、限度額適用認定証を利用すると手元に現金が残るので良いかもしれません。

病院によっては、入院が長期化するときなどに限度額適用認定証の交付を受けるようにと言われるケースもあるようです。

保険適用外の治療には適用されません

高額療養費制度は、健康保険が適用されないものは適用外です。

▼保険適用外のものの例

  • 自然分娩による出産(※ただし、緊急帝王切開等は保険が適用されるので、高額療養費の対象となります。
  • 美容や審美を目的とした自由診療の歯科治療
  • 先進医療にかかる費用
  • 差額ベッド代
  • 入院時の食事代

 

 

高額療養費制度があることを知らずに、本来負担しなくて済むはずの医療費を自己負担してしまうのはもったいないですよね。
通常、医療費が高額になるときは病院からもこの制度の案内があるかと思いますが、大人として知っておくべき制度のひとつです。

PR

Twitterでフォローしよう

おすすめの記事