

裁量労働制に関する基礎知識と、2024年4月以降の改正内容についてわかりやすくまとめます。
目次
裁量労働制は、労働基準法38条の3に基づく制度です。
簡単に言うと、「実際の労働時間ではなく、あらかじめ定めた一定の時間を働いたものとみなす」制度です。
労働時間の制限がなく、労働者自身の裁量で労働時間を管理できます。
会社側が労働時間や業務の進め方を指示することは認められません。
たとえば、1日のみなし労働時間を8時間と定めた場合、実際に働いた時間が6時間でも9時間でも、8時間働いたものとみなされます。
※裁量とは・・・自分の意思で判断し、物事を処置すること
※みなし労働時間とは・・・裁量労働制の契約に定められた労働時間のこと
裁量労働制には「専門業務型裁量労働制」と「企画業務型裁量労働制」の2つがあります。
専門業務型裁量労働制は、「業務の性質上、業務遂行の手段や方法、時間配分などを大幅に労働者の裁量にゆだねる必要がある業務」で、対象となるのは下記の19の業種です。
企画型裁量労働制は、「事業運営上の重要な決定が行われる企業の本社などで企画、立案、調査、分析を行う労働者」が対象です。
導入できる事業所が規定されていて、どんな事業場でも導入できるわけではなく「対象業務が存在する事業場」のみが導入できます。
具体的には、以下の事業場が該当します。
裁量労働制のメリットは、労働者が個人の裁量により労働時間に縛られずに柔軟な働き方ができるという点です。
裁量労働制は出退勤時間などの労働時間の制約はありませんが、労働時間の管理は必要です。
労働時間が長くなってしまいがちな点は注意しなければなりません。
下記の点がデメリット・注意点と言えます。
裁量労働制のデメリットとして、「残業代がでない」と耳にすることがあります。
裁量労働制であっても、法定労働時間を超えて働いた場合や、深夜労働、休日労働を行った場合には割増賃金の支給対象となります。
裁量労働制では、何時間働いても みなし労働時間を働いたとみなされるので、そもそも「残業」という概念がなく少しややこしいですが、誤解している人や会社も多そうなのでしっかりと確認しておきたいところです。
裁量労働制を導入するための手順は、2つの裁量労働制によってことなります。
専門業務型裁量労働制を導入するには、労使協定の締結と協定届の作成、就業規則の変更などが必要です。
下記7つの事項を労使協定に定め、「専門業務型裁量労働制に関する協定届」(* 様式第13号)に記入し、所轄労働基準監督署長に届け出る必要があります。
(* 様式様式第13号)記入例は厚生労働省HPで確認できます。
画像出典:様式第13号(第24条の2の2第4項関係) 専門業務型裁量労働制に関する協定届|厚生労働省
企画業務型裁量労働制を導入するには、以下の手順を踏む必要があります。
労使委員会では、以下8項目について決議が必要です。
企画業務型裁量労働制の導入後は、6ヵ月以内に1回、その後1年以内ごとに1回 所轄労働基準監督署へ定期報告を行う必要があります。
2024年4月1日以降、新たに または 継続して 裁量労働制を導入するためには、制度改正による追加事項を協定・決議して、労働基準監督署に協定届・決議届の届出を行わなければなりません。
主に、従業員の同意とその撤回に関することや、従業員の健康・福祉確保措置の強化に関することが追加されました。
専門業務型裁量労働制の場合は、労使協定に本人同意とその撤回の手続きに関することを追加して定め、協定届の届出をする必要があります。
企画業務型裁量労働制の場合は、労使委員会の運営規程に下記②③④の内容を追加後、決議に①②を追加し、決議届の届出を行う必要があります。
裁量労働制をすでに導入していて、2024年4月以降も引き続き継続する場合は、すべての事業場で必ず2024年3月末までに労働基準監督署へ届出を行わなければなりません。
労使で協議の上で協定しなければならないので、早めの準備が必要です。
2024年4月1日施行の裁量労働制の省令・告示の改正内容については、厚生労働省のリーフレットで確認できます。
▶ 裁量労働制の導入・継続には新たな手続きが必要です|厚生労働省[PDF]