住民税についての基礎知識や疑問を、わかりやすくまとめます。
目次
住民税とは
前年の所得に対して課税され、毎年1月1日に住所を置いている市町村に納める税金です。
市民税と県民税を併せて課税、徴収されます。
税金を負担する能力のあるすべての人に均等に課税する「均等割額」と、その人の所得金額に応じて課税する「所得割額」の2つがあります。
住民税を納めるべき人とは
住民税の納税義務者は、毎年1月1日現在の状況で決まります。
その市区町村に住所がある人:「均等割」と「所得割」
その市区町村に住所はないが、事務所や店舗、家屋敷がある人:「均等割」
※上記に当てはまっても、非課税(住民税を払わなくても良い)となる方もいます。
非課税となる方
1均等割も所得割も課税されない人(非課税)
以下のいずれかに該当する方
- 生活保護法による生活扶助を受けている方
- 障害者、未成年者、寡婦または寡夫で、前年中の合計所得金額が125万円以下の方(給与収入のみの場合、年収2,044,000円未満)
- 前年中の合計所得金額が区市町村の条例で定める額以下の方
※市区町村によってその金額(住民税非課税限度額)が異なります。
東京23区等の大都市圏の場合は、前年中の合計所得金額が次の項目の金額以下の方が該当します。
・扶養親族等がいない場合:35万円
・扶養親族等のいる場合:35万円×(本人+扶養親族等の数)+21万円
詳しくは、後ほど説明します。
2所得割が課税されない方
年中の合計所得金額が次の金額以下の方は、所得割が課税されません。(上記に該当すれば均等割も課税されません)
- 扶養親族がいない場合:35万円
- 同一生計配偶者または扶養親族がいる場合:
前年中の総所得金額等の合計が「35万円×人数(本人+同一生計配偶者+扶養親族数)+32万円」以下の方
住民税の計算方法
1所得金額を求める
2課税所得金額を求める
3所得割額を求める
調整控除の計算方法は、納税義務者の課税所得金額によって異なります。
4年税額を求める
税額の内訳と税率
均等割
均等割額は自治体によって違いますが、標準税率は以下の通りです。
均等割 | 税率 |
市民税 | 3,500円 |
県民税 | 1,500円 |
合計 | 5,000円(年額) |
所得割
所得割 | 税率(※指定都市) | 税率(指定都市以外) |
市民税 | 8% | 6% |
県民税 | 2% | 4% |
合計 | 10% | 10% |
※道府県から指定都市への税源移譲により、指定都市では、個人市民税・道府県民税所得割の標準税率が、市民税8%、道府県民税2%となっています。
指定都市以外の市区町村の標準税率は、市民税6%、道府県民税4%となっており、市民税と道府県民税の税率の合計は10%で変わりません。
一部の自治体では、独自の課税を行っているため、所得割の税率が10%以上となる場合もあります。
住民税は住んでいる場所によって違うのか?
結論から先に言うと、住んでいる自治体によって多少の差があります。
とは言え、標準税率という制度があり、ベースは全国どこでも同じであり、どこの市区町村に住んでいても同じ方法で算出されるので、基本は同じです。
ではなぜ自治体によって差がでるかというと、地方の課税自主権を活用した地方独自税が課税されている自治体があるため、仮に同じ所得であったとしても納税額に差が出ます。
差があると言っても、その金額はさほど大きくはありません。
また、級地区分(かなり噛み砕いて言うと、大都市か地方都市か田舎か、みたいなことです)によって、住民税の非課税限度額に違いがあります。
均等割の非課税限度額
住んでいる地域によって、均等割の非課税限度額が異なります。
均等割が非課税になる方の条件については、先の「住民税を納めるべき人とは」の章をご覧ください。
なぜ住民税の非課税限度額に差があるかというと、生活保護基準との関連があります。
地域における生活様式や物価差による生活水準の差がある実態を踏まえて、最低生活保障の観点から生活保護基準に地域差が設けられています。
級地区分として1級地(東京23区、指定都市)、2級地(県庁所在市、一部の市町)、3級地(一般市・町村など)と分けられていて、これに応じて均等割の非課税限度額の基準が変わります。
均等割の非課税限度額
- 1級地:所得金額≦350,000×世帯人数+21万円(※)
- 2級地:所得金額≦315,000×世帯人数+18万9000円(※)
- 3級地:所得金額≦280,000×世帯人数+16万8000円(※)
※ 21万円、18万9000円、16万8000円の加算は、控除対象配偶者又は扶養親族を有する場合のみ
1級地よりも2級地、3級地の方が、非課税限度額が低くなります。
どういうことかというと、4人世帯で例えると、3級地に住んでいれば所得128万8000円以下なら住民税は非課税となります。1級地に住んでいれば161万円以下でなければ住民税非課税にはなりません。
均等割の違い
均等割の標準税率は、先述の通り、市町村民税 3500円、道府県民税 1500円の合計5000円です。
しかし、自治体独自の課税(超過課税)を行っているところが多いです。
というか、超過課税がない県の方が少ないです。
都道府県により名称は異なりますが「森林環境税」を導入している自治体が多く、例えば、宮城県の個人県民税の均等割は2700円で、うち1200円は「みやぎ環境税」という宮城県独自の課税です。
神奈川県では水源環境の保全・再生に継続的に取り組むための超過課税として、「水源環境保全税」が個人県民税均等割額に300円上乗せされています。
さらに横浜市では、個人市民税に対する超過課税である「横浜みどり税」が900円上乗せされます。
他にも、栃木県では「とちぎの元気な森づくり県民税」として700円、愛知県では「あいち森と緑づくり税」として500円が上乗せされています。
超過課税の金額としては、500円前後が多いようです。
所得割の違い
所得割にも、超過課税を行っているところがあります。
神奈川県では、先述の通り個人県民税に対する超過課税「水源環境保全税」により均等割に300円上乗せされていますが、所得割の税率にも0.025%が上乗せされています。
逆に愛知県名古屋市では市民税減税条例があり、市民生活の支援、地域経済の活性化を図るとともに、将来の地域経済の発展に役立つようにということで、税率が5%引き下げられています。
住民税の納付の仕方
住民税の徴収方法には、普通徴収と特別徴収のふたつがあります。
普通徴収
普通徴収は、納税者が直接、市町村から交付された納付通知書によって自分で納税することです。
特別徴収
特別徴収とは、事業主が従業員の給与から住民税額を天引きして、代わりに納める方法のことです。
原則として給与支払者(会社・事業主)は、従業員の給与から住民税を差し引いて納付する「特別徴収義務者」として地方税法で定められています。
一般的に会社員は特別徴収で住民税を納めることになります。
まとめ
住民税の計算方法はとても複雑でわかりにくいです。
所得税の計算方法と似ていますが、控除額が異なっているので注意が必要です。
均等割や所得割の税率については地域差があるので、住民税の計算方法や税率について詳しく知りたいときは、お住いの自治体のホームページを確認するのが一番確実です。
最後に。
復興特別税が終わると同時に新たな税金として「森林環境税」が導入される予定です。国税として1人年額1,000円 住民税に上乗せされることになります。
詳しくは別途まとめます。