「空家等対策の推進に関する特別措置法」の一部が改正されました。
「空き家を放置していると固定資産税が6倍になる」などといった情報も聞こえてきます。
空き家の増加は社会問題となっており、今後もどんどん増えていくことが予想されます。
実家が空き家になっている人、将来的に空き家になる可能性がある人は多いと思いますので、これを機に、空き家にかかる税金や対策について知っておきましょう。
目次
空き家にも固定資産税がかかる
まず知っておきたいのが、空き家にかかる税金のこと。
人が住んでいない空き家でも、建物と土地のそれぞれに固定資産税および都市計画税が発生し、支払わなければなりません。
▼ 固定資産税の計算方法
課税標準額(固定資産税評価額) × 1.4%(標準税率)
▼ 都市計画税の計算方法
課税標準額(固定資産税評価額) × 最高0.3%(制限税率)
固定資産税・都市計画税の基本の計算方法は上記の通りですが、「住宅用地特例」というものがあり、軽減措置により税金が安くなります。
固定資産税の住宅用地特例で税金が安くなる
固定資産税・都市計画税の「住宅用地特例」とは、住宅が建っている土地に対する減額措置です。(要するに、税金が安くなります。)
住宅用地特例の減額措置の内容と計算方法は以下の通りです。
区分 | 固定資産税 | 都市計画税 | ||
小規模住宅用地 (200㎡以下の部分) |
計算方法 | 固定資産税評価額× 1/6 × 1.4%(税率) | 計算方法 | 固定資産税評価額× 1/3 × 0.3%(税率) |
特例率 | 1/6 | 特例率 | 1/3 | |
一般住宅用地 (200㎡を超える部分) |
計算方法 | 固定資産税評価額× 1/3 × 1.4%(税率) | 計算方法 | 固定資産税評価額× 2/3 × 0.3%(税率) |
特例率 | 1/3 | 特例率 | 2/3 |
人が住んでいる住宅はもちろん、空き家でもしっかりと管理されていればこの軽減措置の対象となります。
ただし、空き家が「特定空き家」や「管理不全空き家」に指定されていない場合に限られます。
※「特定空き家」や「管理不全空き家」についての説明は後述します。
空き家を放置し特定空き家に指定されると、この軽減措置が受けられないため「固定資産税が6倍に」なってしまうのです。(特例率である「6分の1」が適用されないため、6倍の税額になるということです。)
空き家は解体しない方が得?
「空き家を解体すると税金が上がるから損」と聞いたことはありませんか?
これは、この「固定資産税の住宅用地特例」が関係しています。
空き家を更地にすると、解体したことによって建物に対する固定資産税はなくなりますが、住宅用地特例が適用されないために土地の固定資産税が上がります。結果として固定資産税の総額が増えることになるのです。
この課税問題もあり、人が住んでいなくてもあえて空き家をそのまま残しておく人もいるようです。
ただし、放置された空き家や管理が不十分な空き家は、住宅用地特例の対象から外れるということはきちんと知っておく必要がありますね。
特定空き家とは
特定空き家とは、適切な管理が行われておらず、そのまま放置すれば保安上の危険があったり、衛生上有害、著しく景観を損なう等の状態の空き家を指します。
具体的には以下のような状態に該当する空き家を行政が指定します。
- そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態
- そのまま放置すれば著しく衛生上有害となるおそれのある状態
- 適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態
- その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態
特定空家等の敷地については、固定資産税・都市計画税にかかる住宅用地の課税軽減措置の対象外となります。
これに加え、2023年からは新たに「空家等対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律案」により、放置すれば特定空き家になるおそれがある空き家を指す「管理不全空き家」も、固定資産税の軽減措置の適用外となることとなりました。
管理不全空き家の指定を受けたのにも関わらず状況が改善されない場合は、住宅用地特例による減税が受けられなくなります。
管理不全空き家とは
「管理不全空き家」は、特定空き家には指定されていなくとも、窓が割れていたり雑草が生い茂るなどしていて十分な管理がされているとは言えず、そのまま放置されると特定空き家になるおそれがある空き家です。
管理不全空き家に指定されると、自治体は「特定空き家」にならないための状況改善をするよう指導・勧告を行います。これに応じない場合には特定空き家に指定されます。
特定空き家や管理不全空き家にしないためにはどうする?
空き家を所有している場合に、特定空き家や管理不全空き家にしないためにはどうすれば良いのでしょうか?以下のような選択が考えられます。
- 空き家を手放す(売却する)、貸し出す
- 空き家を解体して更地にする
- 空き家のままで適切に維持する(定期的に訪れたり、除草や除雪などの手入れをまめに行うなどしっかりと管理することが必要です。)
相続した土地については、一定の要件を満たしていれば土地を手放して国庫に帰属させることができる「相続土地国庫帰属制度」もあります。(※この制度を利用する場合、空き家は解体しなければなりません。)
詳細はこちらの記事にまとめていますので、興味がある方はぜひご覧になってみてください。