夫婦共働きで子どもがいる場合、子どもを夫婦のどちらの扶養にいれるか考えるときがありますよね。
どちらの扶養にするかによって、家計にも影響がある場合があります。
この記事では、扶養の基礎知識から、子どもを夫と妻のどちらの扶養にしたら得なのか、注意点等をまとめます。
扶養について迷ったときは、ぜひ参考にしてください。
目次
扶養に関する基礎知識
扶養の意味
基本的には、養っている家族のことをさします。
扶養には2種類ある
扶養には「税法上の扶養」「健康保険上の扶養」の2種類あります。
扶養している家族がいる人に対して税負担を軽減したり、保険料が免除されるようなしくみになっています。
2種類の扶養の考え方や対象は全く違う
「税法上の扶養」「健康保険上の扶養」は、おなじく「扶養」ではありますが、扶養に入れるための条件や考え方がまったくもって異なり、完全に別物です。
よく混同している人がいますが、この2つは切り離して考えてください。
税法上の扶養
扶養控除とは、扶養親族の人数によって、所得から一定の額が控除されるというものです。
税法上の扶養は、父母のどちらの扶養にするか自分で決められる(選べる)
税法上の扶養は、子どもを父親と母親のどちらの扶養とするかを、自分で決めることができます。
例えば、長男と長女は父親の扶養にして、次男は母親の扶養に入れる、という風に分けても問題ありません。
「所得の高い方の扶養にする」などの決まりはありません。(決まりはないですが、一般的には所得が多い方に付けた方が得と言われます。ただしすべての家族がそうかというと、そういうわけでもありません。詳しくは後述します。)
子どもひとりにつき控除を受けられるのは世帯で一人です。
一人の子どもを夫婦それぞれが扶養親族として申告することはできません。
悲報!16歳未満の子どもは扶養控除の適用外!
子どもを扶養していても、その子どもが16歳未満の場合には扶養控除の対象となりません。
わかりやすく少々乱暴な言い方をすると、「15歳以下の子どもが何人いようと、所得税は安くなりません」。
理由は、中学校卒業までは児童手当の受給対象となるためです。(所得制限あり)
住民税の算定のときには、16歳未満の子どもがいると節税になることも!
16歳未満の子どもは扶養控除の対象外となりますが、住民税の課税・非課税を決めるときの判定対象には含まれます。
扶養控除の対象でなくとも、扶養親族であることには変わりないので、扶養親族の人数として数えられるのです。
fa-bookmarkどういうこと?
- 住民税には、所得税にはない独自の非課税規定(非課税限度額)があり、一定の所得以下なら非課税(課税されない=払わなくても良い)となるようなしくみになっています。そのため、夫婦のどちらの扶養に入れるかで世帯の納税額に大きな差が出ることがあります。
- 非課税限度額とは、住民税がかからない人・かかる人を決めるための判定ラインです。
- 住民税がかかる人とかからない人を決めるときには、扶養親族の数が関係します。その扶養親族の数を数えるときに16歳未満の子どももカウントする、ということです。
- この非課税限度額制度があるために、子どもをあえて夫婦のうち所得の少ない方の扶養に入れることで住民税が非課税となり、世帯の節税となるケースがあります。
例えば、子ども2人を扶養に入れる場合、所得が137万円以下であれば 住民税の所得割が非課税になります。
350,000円 × 3(本人+子2人)+ 320,000円=1,370,000円 ← 非課税限度額
たとえば、子供を収入の多い夫から収入の低い妻の扶養に変えることで、妻の住民税が0円になり、さらに保育料まで安くなる場合もあるのです!これは知らなきゃ損です。
所得が非課税限度額を超える場合には、16歳未満の子を扶養親族としていても節税効果はありません。
所得が少ない方の扶養に入れたからと言って必ずしも得になるわけないので注意してください。
住民税算定のしくみについてもっと詳しく知りたい方は、こちらの関連記事をご参照ください。
健康保険の扶養
自営業やフリーランス、農業従事者等が加入している国民健康保険には扶養の概念がありません。
扶養がないということはどういうことかというと、たとえ子どもであっても、収入がなくても、保険料(均等割)発生するということです。
健康保険上の扶養は、原則として父母のうち収入の多い方の扶養とする
健康保険上の扶養は、原則として父母のうち収入の多い方の扶養とするという決まりがあります。
※収入が少ない方の給与で生活費を負担している場合等は、収入が少ない方の扶養とすることが認められる場合もあります。扶養にするためには認定審査があります。
扶養の要件に関して詳しくは、こちらの関連記事をご参照ください。
夫婦の収入が同じくらいのときはどちらの扶養に入れたら良いのか?
基本的には夫婦のうち収入の多い方の扶養にするルールですが、もし夫婦の収入が同じくらいの場合、どちらの扶養にするか悩む場合もあると思います。
加入している健康保険が協会けんぽではなく健康保険組合の場合には、組合独自の付加給付がある場合があるので、夫婦双方の加入している健康保険の内容を確認し、有利な方の扶養に入れると良いでしょう。
共働き夫婦の子どもの扶養認定について詳しくは、こちらの関連記事をご参照ください。
税法上の扶養と健康保険上の扶養は、一致していなくても構わない
制度上は、税法上の扶養と健康保険上の扶養を分けることは問題になりません。
例えば「税法上は妻の扶養で、健康保険では夫の扶養にする」等も可能ということです。
ただし、お勤めの会社によっては、これが認められなかったり、税法上と健康保険の両方で扶養にいれていなければ家族手当の支給対象とならない等の決まりがある場合があるので、注意してください。勤務先に確認してみるのが良いでしょう。
会社から支給される家族手当についても要確認
会社によっては、扶養家族がいると家族手当や扶養手当等が支給される場合があります。その制度は会社独自の制度ですので、手当の名称や支給要件はその会社によって異なります。
「健康保険の扶養にしていること」「税法上と健康保険の両方で、扶養にしていること」などが支給要件となっている場合もありますし、「世帯主であること」等が条件になっている会社もありますので、勤務先に確認してみてから、夫婦どちらの扶養にするのかを検討しましょう。
まとめ
結局のところ、共働き夫婦は子供をどちらの扶養にするべきかを一概には言えません。個々のケースに合わせて検討が必要となります。制度が複雑でややこしい話が多く、よくわからないから夫の扶養でいいや、となってしまいがちですが、家計に大きな影響を与える場合もありますので、一度見直してみると良いかもしれませんね。
夫婦共働きで、夫も妻も、それぞれが住民税を支払っている場合には、子どもの扶養を見直すことで世帯全体の納税額を減らせる可能性がありますよ。
最後に、この記事の内容のおさらいとして ポイントをまとめます。
子どもを夫婦どちらの扶養にするか悩んだら~ポイントまとめ
- 子どもが16歳以上なら、所得税・住民税を計算する際 扶養控除の対象となるため、所得が高い方の扶養にした方が所得税・住民税が安くなり、得。
- 子どもが15歳以下なら、所得税的にはどちらの扶養にしても損も得もない。(扶養控除の対象にならないので意味がない)
- 住民税には非課税制度があるので、所得金額と子どもの人数(16歳未満もカウントする)によっては、所得の少ない方の扶養にした方が住民税が非課税(払わなくても良い)となり得するケースがある。
- 原則として、社会保険上の扶養は収入が高い方にいれるという決まりになっている。
- 夫婦の収入が同じぐらいの場合は、健康保険の給付が手厚い方に入れた方が得。
- 税金の扶養と健康保険の扶養が異なっていても制度上は問題ないが、勤務先によっては扶養に関して統一しなければならないというルールがあったり、家族手当の支給要件となっている場合がある。
- 子どもを収入が少ない方(妻とする)の扶養にすることで、夫の収入によっては児童手当の所得制限に影響する場合もある。