子どもの扶養は収入の低い妻につけた方が得?!住民税の非課税制度が鍵の節税方法とは?

共働き世帯で16歳未満の子がいる場合、夫婦のうち収入が低い方の扶養にした方が得をするケースがあるということをご存知ですか?

税法上の扶養は両親のどちらにつけるかを自分たちで選ぶことができます。

なんとなく夫(父親)の方につけている方がいるとしたら、もったいないことをしているかもしれません。

この記事では、16歳未満の子どもがいる共働き世帯は知らなきゃ損な節税に関する情報をまとめます。

 

税法上の扶養とは

まずは税法上の扶養って何?という基本的なところから確認していきます。

税法上の扶養とは
税法上の扶養は、所得税や住民税の扶養控除に関わります。
扶養控除とは、扶養親族の人数によって、所得から一定の額が控除されるというものです。
納税者の収入から「扶養控除額」を差し引くことで、税金の計算に用いる課税所得が引き下げられるので、結果、税負担が減るというわけです。
扶養親族が多ければ、その分控除額も増えます。

わかりやすく言うと、 「誰かを養うということはお金がかかって大変だから、その分税金を安くしてあげるよ」というのが扶養控除です。

POINT

  • 税法上の扶養は、父親と母親のどちらの扶養とするかを、自分で決めることができます。
    例えば、長男と長女は父親に扶養にして、次男は母親の扶養にする、という風に分けても問題ありません。
  • 「所得の高い方の扶養にする」などの決まりもありません。(決まりはないですが、一般的には所得が多い方に付けた方が得と言われます。ただしすべての家族がそうかというと、そういうわけではありません。詳しくは後述します。)
  • 子どもひとりにつき控除を受けられるのは世帯で一人です。
    一人の子どもを夫婦それぞれが扶養親族として申告することはできません。

所得税と住民税の扶養控除額には違いがある

所得税と住民税のそれぞれに扶養控除がありますが、扶養控除の金額が異なります。
対象となる子どもを扶養している場合の控除額は、住民税で33万円、所得税が38万円となります。

16歳未満の子どもを扶養しているときの留意点

16歳未満の子どもは扶養控除の適用外

子どもを扶養していても、その子どもが16歳未満の場合には扶養控除の対象となりません
15歳以下の子どもが何人いようと、所得税は安くならないのです

なぜ16歳未満の子どもが扶養控除の対象外なのかというと、その理由は、中学校卒業までは児童手当の受給対象となり、国からお金をもらっているからです。(所得制限あり)

でもガッカリするのは少し待ってください!

所得税は安くなりませんが、住民税は安くなるかもしれません!!

ここからがこの記事の本題です。

住民税の算定のときには、16歳未満の子どもがいると節税になることも!

16歳未満の子どもは扶養控除の対象外ですが、住民税の課税・非課税を決めるときの判定対象には含まれます
扶養控除の対象でなくとも、扶養親族であることには変わりないので、扶養親族の人数として数えられるのです。

ですから、子どもを夫婦どちらの扶養に入れるかで 世帯の納税額に大きな差が出ることがあります。

どういうことかというと、住民税の非課税制度(非課税限度額)が関係しています。

これは住民税がどのように課税されるのかを知らなければなかなか理解が難しいと思いますので、住民税の非課税限度額って何?というところから順を追って解説していきます。

 

住民税の非課税制度、非課税限度額について知ろう

住民税には、所得税にはない独自の非課税規定(非課税限度額)があります。
非課税限度額とは、住民税がかからない人・かかる人を決めるための判定ラインです。

住民税がかかる人とかからない人を決めるときに、扶養親族の人数が関係します。その扶養親族の数を数えるときには、子どもの年齢が16歳未満だろうが16歳以上だろうが関係なく、扶養親族としてカウントされます。

この非課税限度額制度があることで、子どもを所得の少ない方の扶養にすると住民税が非課税になる=得をする場合があるのです!

 

住民税(所得割)の非課税限度額とは
住民税には非課税基準があり、所得が一定金額以下の場合は所得割が非課税になります。
非課税限度額は、所得と扶養している人数によって決まります。(扶養人数が多いほど、非課税限度額が拡大します)
住民税は、まず最初に「住民税を払わなくても良い人かどうか」を判定します。
「所得が非課税限度額を超えているかどうか」を判定するわけです。
さて、ここで住民税が非課税(払わなくても良い)になる条件を見てみましょう。
赤枠で囲んだ部分が大事なところです。(画像は過去のマナビト記事より抜粋)
例えば、東京23区内にお住いの方が子ども2人を扶養に入れる場合、
所得が126万円以下であれば、住民税が非課税となります。(均等割も所得割も発生しません)
所得が137万円以下であれば、住民税の所得割が非課税になります。(この場合、均等割のみ支払います)
※均等割の非課税限度額制度の所得要件(計算式の金額)はお住いの自治体によって異なります。お住いの自治体のホームページでご確認ください。

年収の低い方の扶養に入れた方が得をするケースとは?

住民税は、一定の所得(非課税限度額)以下なら課税されない=払わなくても良いしくみになっています。

このため、夫婦のうちあえて所得が低い方に16歳未満の扶養親族をつけることで、住民税が非課税となり、世帯の節税となるケースがあります。

たとえば、子供を収入の多い夫から収入の低い妻の扶養に変えることで妻の住民税が0円になり、さらに保育料まで安くなる場合もあるのです!これは知らなきゃ損です。

夫婦共働きで妻が夫の扶養に入っていない(夫だけではなく妻も住民税を支払っている)場合は、知っておいた方が良いですよ!

早速、こちらの4人家族を例にして説明していきます。
共働き4人家族イメージ
ごくごく一般的な4人家族です。
夫:収入600万円(所得436万円)
妻:収入200万円(所得132万円)
子:未就学児が2人
東京都在住と仮定します。
扶養親族がいない場合は、合計所得金額が35万円以下であれば非課税となりますが、夫も妻も35万円以上の所得があります。
ということは、この時点では二人とも住民税が課税されるということになります。
では次に、扶養親族が2人いる場合の非課税限度額を見ていきましょう。
▼住民税(所得割も均等割も課税されない)の非課税限度額
所得金額の合計≦35万円 × (1+扶養親族の数)+21万円
▼住民税(所得割)の非課税限度額
 所得金額の合計≦35万円 × (1+扶養親族の数)+32万円
※東京23区の場合(非課税限度額は、市区町村によって異なります。)
計算すると以下の通りとなります。
▽所得割も均等割もかからないライン
 35万円×3(本人+子2人)+21万円=126万円
 所得が126万円以下であれば、住民税が非課税となります。(均等割も所得割も発生しません)
▽所得割がかからないライン
 35万円×3(本人+子2人)+32万円=137万円
 所得が137万円以下であれば、住民税の所得割が非課税になります。(この場合、均等割のみ支払います)
夫の所得金額は436万円ですので、夫に子ども2人を扶養につけたとしても非課税限度額を超えてしまい、夫は非課税にはなりません。
もちろん妻も非課税にはなりません。
しかし!
妻のほうに子ども2人を扶養につけると、妻は住民税の所得割が非課税になるのです!(妻の所得金額が137万円以下だからです。)
このとき夫の住民税額は、扶養があろうがなかろうが変わりません。
ということは、妻の扶養にした方が 世帯単位でみると節税になりますよね!

ちなみに、子どもが16歳以上の場合には 扶養控除の適用をうけることができるので、所得税を安くするという観点から 一般的には所得が高い方の扶養にした方が得になると思われます。

 

要注意
  • 所得が非課税限度額を超える場合には、16歳未満の子を扶養親族としていても節税効果はありません。(※16歳以上の子を扶養している場合には扶養控除がうけられます)
  • 扶養をつけても夫婦双方の所得が非課税限度額を超える場合には、どちらの扶養につけても変わりありません。
  • 扶養親族がいなくてももともと非課税の場合は、扶養をつける意味がないので、所得が高い方の扶養とした方が良いでしょう。
  • 所得が少ない方の扶養に入れたからと言って必ずしも得になるわけないのでご注意ください。
  • 扶養を所得の低い方につけることで、世帯主(所得の多い方)の所得によっては児童手当の所得制限にひっかかってしまう場合があるので注意が必要です。

 

子どもの扶養に関する基礎知識を確認したい方は、こちらの記事をご覧ください。

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