2020年2月1日付けで、新型コロナウイルス感染症が指定感染症として定められました。
これにより、体調不良や感染による欠勤に対する取り扱いが変わります。
そもそも指定感染症とは?
感染症法(正式名称:感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律)が関わってくるのですが、ざっくり言うと感染症法における感染症の分類のひとつが、「指定感染症」です。感染力や重症度などに応じて「1類感染症」から「5類感染症」まで分類されています。
例えば、エボラ出血熱、SARS、MERSなどの名の知れた感染症は、感染予防法の1類から3類感染症に指定されています。「指定感染症」は、これらに準じた措置を行うこととなります。
- 法に基づいて都道府県知事が就業制限や隔離措置(入院)の勧告等を行うことができる
- 感染症指定医療機関で診療を行うこととなる
- 入院費が公費負担となる
- 保健所や行政への届出が必須となる = 発生動向が把握できる
- 接触者、感染経路の把握ができる
新型コロナウイルスに関連して休業するとき
休業手当を支給しなければいけないのはどんなときですか?
新型コロナウイルスに関連して労働者を休業させる場合、賃金支払いの必要性の有無等については、個別事案ごとに状況をみて総合的に判断しなければなりませんので、一概には言えません。
原則として、使用者の責に帰すべき事由による休業の場合には、使用者は、休業期間中の休業手当(平均賃金の100分の60以上)を支払わなければならないとされています(労働基準法第26条)。
この「使用者の責に帰すべき事由」にあたるかどうか、判断が難しいですがしっかりと判断しなくてはなりません。
新型コロナウイルス感染拡大による特例措置で、申請書類の簡素化や助成率の引上げ等が実施されている。
1従業員が新型コロナウイルスに感染したとき
- 従業員が新型コロナウイルスに感染しており、都道府県知事が行う就業制限により労働者が休業する場合は、「使用者の責に帰すべき事由による休業」に該当しないので、休業手当を支払う必要はありません。
- 健康保険に加入していて要件を満たせば、各保険者から傷病手当金が支給されます。
2従業員に発熱などの症状がある(新型コロナウイルスかどうかわからない)とき
- 発熱などの症状があるため労働者が自主的に休む場合は、通常の病欠と同じく取り扱います。
- 例えば熱が37.5度以上ある場合等、一定の症状があることを条件として一律に労働者を休ませる措置をとる場合には、使用者の自主的な判断で休業させるということになり、「使用者の責に帰すべき事由による休業」に当てはまります。よって休業手当を支払う必要があります。
従業員が自ら取得することは問題ありませんよ。
事業所で有給の特別休暇制度を設けている場合には、そちらを活用できれば従業員も安心して休めますね。
3感染流行地域や、海外渡航後の従業員を休業させるとき
- 新型コロナウイルス感染症の流行地域に行っていた人で、37.5度以上の発熱がある場合や倦怠感や呼吸器症状がある場合は、「帰国者・接触者相談センター」に相談してもらいます。
相談センターで出社を控えるよう要請されたときに、使用者が休業を命じる場合には、休業手当を支給する必要はありません。 - 本人が無症状で元気な時や、医療機関の受診結果、または帰国者・接触者相談者センターへの相談の結果、職務の継続が可能である(欠勤の必要がない)と判断された従業員を、使用者の判断で休業させる場合には、一般的に「使用者の責に帰すべき事由による休業」に当てはまり、休業手当を支払う必要があります。
「保健所や自治体からの就業禁止の指示」または「従業員本人が自主的に休む」場合は、当然ながら会社都合での休みということにはなりませんので、休業手当の支払い義務はなしということになります。
4家族が感染したときや、濃厚接触者となった従業員を休業させるとき
- 同居する家族が新型コロナウイルスを発症した従業員や、発症者の濃厚接触者であり 発熱や呼吸器症状、倦怠感、息苦しさ等の症状がある場合には、まず「帰国者・接触者相談センター」に問い合わせたり、保健所の指示に従ってもらうようにしましょう。この場合、外出を控え、案内された医療機関で受診することが要請されています。
このような場合には、使用者が当該従業員を休ませることは、当然ながら使用者の責めに帰すべき事由による休業とはいえないので、賃金や休業手当の支払いは必要ありません。 - 発熱等の症状もなく「帰国者・接触者相談センター」への相談の結果、職務の継続が可能だとされた場合には、使用者の判断で休業させると「使用者の責に帰すべき事由による休業」にあたり、休業手当の支払いが必要であると厚労省が言っているので、注意が必要です。
5事業の休止や縮小等を余儀なくされ、やむを得ず休業とする場合
不可抗力による休業の場合は、使用者に休業手当の支払義務はありません。
例えば・・・
海外の取引先が新型コロナウイルス感染症を受け事業を休止したことに伴う事業の休止である場合には、当該取引先への依存の程度、他の代替手段の可能性、事業休止からの期間、使用者としての休業回避のための具体的努力等を総合的に勘案し、判断することになります。
6協力依頼や休業要請などを受けての営業自粛で労働者を休業させる場合
- 新型インフルエンザ等対策特別措置法による対応で、協力依頼や要請などを受けて営業を自粛し、労働者を休業させる場合であっても、一律に休業手当の支払義務がなくなるわけではありません。
- 不可抗力による休業の場合は、使用者に休業手当の支払義務はありません。
1.その原因が事業の外部より発生した事故であること
2.事業主が通常の経営者としての最大の注意を尽くしてもなお避けることができない事故であること
という2つの要素を、いずれも満たす必要があります。
今回の新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づいてた、営業自粛の要請や協力依頼も当てはまります。
例えば、
・自宅勤務などの方法について十分に検討しているか
・労働者に他に就かせることができる業務があるにもかかわらず休業させていないか
などで判断されます。
従業員の休業に関する助成・支援制度
1休業手当に対する雇用調整助成金
労働基準法上の休業手当の要否にかかわらず、経済上の理由により事業活動の縮小を余儀なくされた事業主に対しては、事業主が支払った休業手当の額に応じて雇用調整助成金が支払われます。
fa-external-link雇用調整助成金 |厚生労働省
2小学校等の臨時休業に伴う保護者の休暇取得支援について
臨時休業した小学校や特別支援学校、幼稚園、保育所、認定こども園などに通う子どもを世話するために、2020年2月27日~6月30日の間に従業員(正規・非正規を問わず)に有給の休暇(法定の年次有給休暇を除く)を取得させた会社に対しては、休暇中に支払った賃金全額(1日8,330円が上限)が助成されます。
fa-external-link新型コロナ休暇支援~小学校休業等対応助成金|厚生労働省
fa-bookmarkこの記事は、厚生労働省のホームページ「新型コロナウイルスに関するQ&A(企業の方向け)」を参考にしてまとめました。
fa-external-link新型コロナウイルスに関するQ&A(企業の方向け)|厚生労働省