償却資産の所有者は、毎年1月1日現在の所有状況を毎年1月末日までに市区町村に申告しなければなりません。
償却資産とは、土地や建物以外の事業用資産で、会社が事業に用いることができる構築物、機械、 工具器具備品等が該当します。
この記事では、償却資産と償却資産申告書、償却資産にかかる税金について、なるべく簡単にわかりやすくまとめていきます。
償却資産とは?
償却資産とは、土地や建物以外の事業用資産のことです。
会社や、個人事業経営者などが、その事業のために所有している建物付属設備・構築物・機械・工具器具備品などの固定資産を「償却資産」といい、償却資産には「固定資産税」が課税されます。
固定資産税のうち、償却資産にかかる分を償却資産税と呼んだりします。(実際には償却資産税という名前の税金はありません。)
固定資産税とは?
固定資産税とは、所有している固定資産(土地、家屋、償却資産)に対する税金で、固定資産の資産価値(評価額)に応じて課税されます。
なぜ土地や家を持っているだけで税金がかかるのか?
なぜ土地、家屋、償却資産を保有していると税金をとられるのかというと、固定資産税は、固定資産の保有と市町村が提供する行政サービスとの間に存在する受益関係に着目し、応益原則に基づいて課税される財産税だからです。
固定資産税課税の根拠として二つの側面があります。
- 資産の所有者と市町村の行政サービスとの間に受益関係が発生する
- 資産を保有するという事実に納税者の担税力が認められる
土地や家などの固定資産は、道路を作るといった行政サービスによって、利便性の向上、資産価値の向上などの恩恵を受けていると考えられます。
そこで、その恩恵を受ける人(固定資産の所有者)が、資産価値に応じた税負担をする、という理論になります。
なぜ償却資産は固定資産税の対象なのか
償却資産が固定資産税の課税対象となっている理由は、土地や家屋と同様の考え方(応益課税の原則)に基づき、課税することとされているようです。
償却資産をたくさん所有しているからといって受益が大きいのか?うーん、納得できるようなできないような・・・。
償却資産申告書とは?
償却資産申告書とは、所有している償却資産について市区町村に申告するための書類です。
償却資産申告書(償却資産課税台帳)が、市区町村が固定資産税を課税するための資料となります。
誰がどこに何を申告する?
事業を行っている法人や個人で事業用資産を所有している場合は、毎年、会社所在地の市区町村に、所有している資産と 課税期間1年間に新たに取得した償却資産、処分(除却、売却)した償却資産を申告しなければなりません。
償却資産の申告期限
償却資産申告書の提出期限は、毎年1月31日です。
毎年1月1日時点の償却資産について、1月末(土日の場合は翌営業日)までに申告します。
※会計期間(決算期)ではなく、毎年1月に申告が必要です。
ここで解説している「償却資産申告書」は、決算のときに提出する「固定資産台帳」「償却資産台帳」とは別物です。
償却資産と似た言葉で「減価償却資産」があり紛らわしいですが、減価償却資産には償却資産だけでなく建物・車両・ソフトウエア・営業権等も含まれます。
税務署に提出する書類は 国税(所得税等)の計算のためのもので、償却資産の申告書は市税である固定資産税の計算のためのものですので、両者は異なるものなのです。
この記事で解説している償却資産申告書(償却資産課税台帳)は、市区町村が固定資産税を課すための資料であるということを覚えておきましょう。
償却資産税の課税の流れ
- 毎年、1月1日に所有している償却資産をまとめ、1月31日までに所在地である市区町村へ償却資産申告書を提出します。
- 市区町村は、申告された償却資産に対し、国が定めた「固定資産評価基準」に基づいて評価をします。
- 取得価額をもとに取得後の経過年数に応じた減価を考慮して、評価額が決定されます。
申告が必要な償却資産とは?
- 市区町村へ申告が必要な償却資産は、「土地・家屋以外の事業用資産」です。
会社が事業に用いることができる構築物、機械、 器具、備品等が該当します。 - 家庭用にのみ使用されているものは償却資産に該当しませんが、家庭用にも事業用にも使用されている場合は 償却資産に該当します。
なぜ土地や建物(家屋)は申告しなくて良いのか?
申告が必要なものの中に、なぜ土地・家屋が含まれないのかというと、土地や家屋は登記すると「登記簿」によって課税の対象が把握できるからです。
自動的に課税され固定資産税の納税通知書が送られるため、申告は不要なのです。
償却資産申告書で申告する資産とは
償却資産の申告をしなければならないのは、土地・家屋以外の有形固定資産で、減価償却の対象となる資産です。
ややこしいのが、「固定資産台帳には記録されるが、償却資産申告書に記載されないもの」があること。
これがいつも私の悩みポイントになるので、これについてもまとめます!
償却資産申告書への記載対象になるもの
償却資産の申告対象は「1月1日現在で、事業の用に供することができる資産のうち、土地・家屋以外の有形固定資産」です。
下記のものも申告対象となります。間違えやすものをまとめました。
- 償却済みの資産
- 建物付属設備や構築物など、建物本体以外で、固定資産税の対象になっていないもの
※「建物と一体となっているもの」は要注意です。 - 建設仮勘定で処理されている資産
- 決算期以降に取得し、まだ固定資産勘定に計上されていない資産
- 取得価額が20万円未満の資産でも、個別に減価償却しているもの
償却資産申告書に記載が不要なもの
償却資産の申告対象とならないものは次の通りです。
- 土地・建物など、固定資産税が課されているもの
- 一括償却資産 ※20万円未満
- 自動車税、軽自動車税の課税対象である自動車
- 無形固定資産(ソフトウエアや特許権など)
- 繰延資産
償却資産税の免税点制度
固定資産を保有していても、金額が少ない場合は課税されないようになっています。
償却資産の免税点は150万円であり、償却資産の合計額が150万円未満であれば課税されません。
※免税点(150万円未満)となる場合でも、申告は必要です。
償却資産の申告に関する疑問と答え
なぜ償却資産は毎年申告が必要なのか?
なぜ償却資産だけ毎年の申告義務があるのかというと、理由は簡単で、申告してもらわなければ市区町村が償却資産の所有状況を把握できないからです。
償却資産には登記簿がないので、新たに購入(所有)したり廃棄をしても、自治体はその事実を知ることができず、課税することができません。
ですから、毎年1月1日時点での所有状況を所有者の方から申告する必要があるのです。
固定資産税は固定資産を所有する人が納める地方税です。
償却資産の分(償却資産税とも呼ぶこともある)は、申告納税方式となっています。
だから毎年申告が必要なのです。
償却資産申告書を提出しないとどうなる?
償却資産申告書を期限までに提出しないとどうなるのかというと、市町村の条例によって3万円以下の過料を科されたり、地方税法の規定に基づいて実地調査を行い課税され、延滞金が徴収される場合もあります。
償却資産の申告は、地方税法第383条で規定されています。
最後に
この記事は「償却資産の申告」について なるべく簡潔にわかりやすくまとめたものです。
あくまでも概要をつかむためのきっかけとして、参考にしていただければと思います。
申告方法に関する詳細は、資産の所在する市区町村の固定資産税担当課へお問い合わせください。