会計書類を紙でなく電子データで保存するなら要確認!電子帳簿保存法

法人や個人事業主は、事業に関する書類や帳簿を作って記録した上で、保存しなければならないという義務があります。
しかし、帳簿書類の作成・保存には多大な手間や保管場所が必要です。

そこで、帳簿書類を電子的に保存することを認める制度「電子帳簿保存制度」があり、その内容を定めた法律が「電子帳簿保存法」です。

この記事では、電子帳簿保存法の概要や、電子保存するための要件等をわかりやすくまとめています。

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電子帳簿保存法とは

電子帳簿保存法の概要

電子帳簿保存法とは
電子帳簿保存法とは、国税関係帳簿書類を紙ではなく電子データで保存することを認める法律です。
正式名称は「電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律」といい、1998年に制定されました。その後何度か改正されていて、時代に合わせて規制が緩和されてきています。

関係する法律で「e-文書法」という法律があります。
これは、特定の文書・書類を電子的に保存することを認めた法律で、「e-文書法」が2005年に施行されたことに伴って「電子帳簿保存法」も改正され、国税関係書類の電子ファイル保存が認められるようになりました。

電子帳簿保存制度は、2019年度の税制改正でも一部の特例が創設されて、さらに2020年度の税制改正でも見直しがされました。

2020年10月からの改正のポイントとしては、タイムスタンプ要件(詳しくは後述します)が緩和され、制度を利用しやすいように変わってきています。

電子帳簿保存法が定める、電子的保存のポイント

1電子帳簿保存法で認められているデータの保存方法は2種類

1.電磁的記録の備付け及びCOMの保存
電磁的記録による保存とは、国税関係帳簿の全部又は一部について、自己が最初の記録段階から一貫して電子計算機(会計システムなど)を使用して作成する場合の保存方法(電子データ)です。
わかりやすい表現をすると、会計システムの利用等パソコンで作成したデータを保存することです。
2.スキャナ保存
スキャナ保存とは、既存の紙媒体の証憑類などをスキャンして読み取る保存方法です。
2016年からは、スマホでの読み取りも認められています。
わかりやすい表現をすると、紙の書類をスキャンしてデータ化し 保存することです。

証憑(しょうひょう)書類とは、取引の証拠となる書類のことで、領収書、請求書、納品書、注文書、仕入伝票、契約書、見積書など、取引を証明する書類はすべて証憑書類です。

2保存法によって、認められている書類の対象が異なる

現金出納帳、仕訳帳、売掛帳、買掛帳、総勘定元帳、固定資産台帳などの帳簿書類や、貸借対照表、損益計算書、棚卸表などの決算書類は、電子計算機(会計システムなど)を使用して作成した電子データのみが認められていて、スキャナー保存をすることは認められていません。

領収証、レシート、見積書、納品書、請求書、契約書などの「証憑書類」と呼ばれる書類は、電子データによる保存とスキャナー保存のどちらも認められています。

表にした方がわかりやすいと思うので表にしてみました。

電子データで保存できる国税関係帳簿書類
書類名 電磁的記録による保存 スキャナ保存
国税関係帳簿 仕訳帳、総勘定元帳、現金出納帳などの帳簿類 ×
国税関係書類 決算関係書類 貸借対照表、損益計算書、棚卸表など ×
その他 請求書、領収証などの証憑書類

3電子保存のための所定の要件の下で保存されていなければならない

電子帳簿保存を行うためには、「記録の真実性」及び「可視性等の確保」に必要となる所定の要件を満たしていなければなりません。

記録の真実性
記録の真実性=データが改ざんされることがなく、本物か
電子データは紙の書類よりも改ざんしやすいため、その内容が改ざんされることがなく、真実であることを証明する必要があります。
ただ電子的な保存をしただけでは、税務上正式書類として認められません。
■要件
  • 入力期間の制限
  • 一定水準以上の解像度及びカラー画像による読み取り
  • タイムスタンプの付与
  • 読取情報の保存
  • ヴァージョン管理
  • 入力者等情報の確認
  • 適正事務処理要件

 

スキャナ保存する場合は、作成や更新がされた日付、時刻を証明する「タイムスタンプ」を付与することが必要な場合があります。(※訂正・削除履歴の残るシステムを利⽤している場合は、タイムスタンプ付与は不要)
タイムスタンプとは?
タイムスタンプは、ある時刻にその電子データが存在していたこと、その時刻から不正に改ざんされていないことを証明するものです。
スキャナ保存した電子データにタイムスタンプを付与することで、電子帳簿として認められることになります。

タイムスタンプは、郵便物で例えると消印のようなイメージです。
可視性等の確保
可視性の確保=誰もが確認できる状態で保存されているか
要件を満たせば何でも電子保存OKというわけではなく、たとえば、文字が読めないような書類は電子化保存は認められません。
税務調査等が入るときに効率よく調査ができるようにしておくことも必要です。
要件としては
  • 関連する国税関係帳簿との相互関連性の確保
  • 見読可能装置の備付け等(カラープリンターやディスプレイ等)
  • 電子計算機処理システムの開発関係書類等の備付け(保存場所に操作マニュアルを備え付け、速やかに整然とした形式で出力できること)
  • 検索機能の確保
などが必要となります。

電気帳簿保存法の申請

電子データで保存するためには、電子保存を開始する3ヶ月前までに所轄の税務署(税務署長)に承認申請書を提出する必要があります。

2021年6月4日追記

令和3年度の税制改正(2022年1月施行)において、「税務署長の承認制度」が廃止されました。
また、これまでデータ保存とあわせて紙原本での保存が必要なケースがありましたが、紙での保存を不要とする等、適用要件が緩和されました。

 

電子帳簿保存を始めるには、社内ルールの整備も必要になると思います。
電子保存をするためには多くの要件を満たしていなければならないので、「要件を満たした会計ソフトの導入」をすることが現実的なケースもあるでしょう。会社の実情にあわせて対応していきたいですね。

 

電子帳簿保存制度に関する詳しい要件は、国税庁のホームページでご確認ください。

電子帳簿保存法の概要|国税庁

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