毎年猛威をふるう、インフルエンザ。
インフルエンザにかかってしまった場合、体調不良のために会社を休む人がほとんどだと思います。
具合が悪い自分のために休むのはもちろんですが、職場等でウイルスをまき散らしてしまうことを防ぐ意味でも、自宅で安静にすることが必要です。
ですが、もし無理にでも出社したいという社員がいたら・・・?
従業員がインフルエンザにかかったとき、会社からの命令として休ませることはできるのでしょうか?
目次
インフルエンザは就業禁止の対象か?
インフルエンザで出勤停止とする法律はない
日本国内では法律で、一定の伝染性の疾病について、感染症のまん延を防ぐために就業を禁止していますが、その中に毎年流行している季節性インフルエンザは含まれていません。
「インフルエンザにかかったら〇日休まなければならない」という法律はないのです。
よって、原則として会社側は、インフルエンザに罹患した従業員の出社を拒むことはできません。
(出社を拒む法的根拠がない、という意味です)
だからと言って出社を強要することも許されません。
無理に仕事をさせて本人の症状が悪化したり、罹患者を出社させたことで社内感染が拡大した場合等には、安全配慮義務違反を問われる可能性もあります。
労働契約法の第5条に定められていて、2008年から施行されています。
こどもの場合は法律で出席停止期間が定められている
こどもの場合は、学校保健安全法施行規則によって出席停止期間が定められていて、インフルエンザに罹患した場合は「発症した後5日を経過し、かつ、解熱した後2日を経過するまで」学校を休まないといけません。
保育園児や幼稚園児は、学校に通う子どもより解熱後の出席停止期間が1日長く「発症した後5日を経過し、かつ、解熱した後3日を経過するまで」休まなければなりません。
大人が就業禁止となる病気とは
法律において、就業制限を行う必要があるとされているのは、新型インフルエンザや、特定鳥インフルエンザ、SARS、MERSなど、感染予防法の一類から三類感染症に指定されている、危険性の高い病気です。
毎年流行している季節性インフルエンザは該当しません。
ちなみにノロウイルスも該当しません。
fa-chain厚生労働省HP|感染症法における感染症の分類 [PDF]
出勤停止を命じる場合、休業手当の支払いが必要
就業禁止とする法的根拠がなくても、事業の正常な運営の為や、他の従業員を感染から守る意味でも、インフルエンザに罹患した従業員を出勤停止とした方が良い場合もあります。
そのような判断から、会社側が出勤停止を命じる場合には、従業員に対して「休業手当」を支給しなければなりません。
使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の100分の60以上の手当を支払わなければならないとされています。
家族がインフルエンザに罹患したときは?
本人ではなく家族がインフルエンザに罹患した場合に、従業員本人は元気だけど家族感染の可能性から会社を休んでもらうというようなときも、休業手当の支払いが必要となります。
子どもの面倒をみたいという理由で従業員側から休みを希望しているときは、休業手当を支払う必要はありません。
医師の診断により、出勤できない期間が明確なときは?
病院で医師に「〇日間は会社を休むように」と診断を受けたときは、医師が示した期間は当然ながら「会社都合で休ませる」ことにはなりません。よって、休業手当を支払う必要はありません。
- 医師の診断書で出勤停止の期間は、社員個人の病気欠勤ですので、休業手当の支払いは必要ありません。
- 診断書がない場合や、診断書で示された期間よりも多く休ませる場合は、その期間は休業手当を支払う必要があります。
※ 発熱等の症状があっても従業員が自ら病院受診をしないとき、会社からの業務命令として本人の意に反して検査を受けさせる場合は、受診時の賃金の支払い・受診料が会社負担となるケースもあるようです。
インフルエンザに感染したが、熱が下がったので出社を希望した場合は?
インフルエンザに罹患して休んでいた従業員が、熱が下がり体調が良くなったので出社したいと希望した場合でも、基本的な考え方は同じです。
まだ他の社員に感染する可能性がある期間であれば、会社側の命令により出社を控えてもらうことはできますが、働ける健康状態なのに会社都合で休ませるときには休業手当の支払いが必要になります。
まとめ
インフルエンザにかかってしまった時の対応としては、以下のいずれかになると思います。
※必ず病院で医師の診察をうけ、インフルエンザであると診断されることが前提です。
具合が悪いときは出社せず、自宅で安静に過ごすことが重要です。
【有給休暇を取得】
※有給休暇取得の際は事前申請がなければならない等、会社のルールによっては有休をとれないケースもありえます。
※有給休暇を使うかどうかは、その社員が決めることなので、会社側が取得を強要することはできません。
【欠勤(無給)】
インフルエンザで欠勤した場合も、条件にあてはまれば傷病手当金の対象となります。
休業手当は、平均賃金の60%以上(就業規則による定めがあればその額)です。