

2025年度の税制改正により、大学生世代の子どもを扶養する親とアルバイトをする学生に関わる税制に変化がありました。
この記事では「特定扶養控除の拡充」と「特定親族特別控除」について詳しく解説します。
この記事でいう「学生」とは、19歳~22歳の人を指します。
アルバイトをする学生本人に所得税がかからない収入の上限、いわゆる「年収の壁」は、103万円の壁から160万円の壁に引き上げられました。(2025年の収入から)
これまでもよりも57万円上がったので、税金を気にすることなく働ける範囲が広がりました。
学生の親も控除を満額受けたい場合は、「150万円の壁」になります。
詳しくは後述します。
2025年の税制改正による年収の壁の引き上げについて詳しくはこちらの記事をご覧ください。
上記の記事では、「給与所得控除」の最低保証額の引き上げや、「基礎控除」の改正について表を用いて解説しています。
2025年度の税制改正には関係ありませんが、アルバイトをしている学生は忘れないでほしいのが「勤労学生控除」です。
勤労学生控除は、働く学生(勤労学生)が受けることができる所得控除で、特定の学校の学生・生徒であり、合計所得金額が85円以下かつ給与所得等以外が10万円以下であれば、所得税で27万円、住民税で26万円の控除を受けることができます。
勤労学生控除には年齢制限はありません。
勤労学生控除を受けるためには、アルバイトをしている場合は「扶養控除等(異動)申告書」に勤労学生控除に関する事項を書いて勤務先に提出する必要があります。
ここからは学生の親に関わる話です。
2025年の税制改正では、アルバイトをしている大学生の子どもをもつ親にとってもうれしい改正がありました。
これまでは、学生がアルバイトで年収の壁(103万円)を超えると、親が「特定扶養控除」を受けることができず、学費に多額のお金がかかる子がいても 税負担が重くなってしまっていました。
特定扶養控除は、生計を一にする大学生世代の子ども(その年の12月31日時点の年齢が19歳以上23歳未満)がいる親が受けることができる控除のことです。
対象の学生1人につき63万円の控除が受けられるので、税額に与える影響は大きいです。
このことを気にして、103万円の壁を超えないようにバイトをセーブしていた学生も少なくないはずです。
この問題を解消すべく、2025年の税制改正で「特定扶養控除の拡充」と「特定親族特別控除の創設」が行われました。
子どもの収入が増えても、親は控除を受けることができ、税負担が軽減される範囲が広がりました!
学生は学費にお金がかかるので税負担が軽減されるのはうれしいですね。
先述の通り、従来、特定扶養控除は 子どもの年収が103万円を超えると適用を受けることができませんでした。
しかし、2025年の税制改正により、特定扶養控除の対象となる子の年収要件が123万円に引き上げられました。
さらに「特定親族特別控除」が新設されたことによって、アルバイトをする大学生の子どもの年収が150万円以下(給与収入のみの場合)であれば、親は、63万円の控除を受けることができるようになりました。
子どもの年収が123万円までは「特定扶養控除」で、年収123万円を超えた場合は新設の「特定親族特別控除」が適用され、年収150万円までは63万円の控除を受けることができます。
特定親族特別控除の創設により、子どもの年収が150万円を超えても、188万円以下であれば段階的に所得控除が受けられるようになりました。(2025年分以後の所得税について適用)
特定親族特別控除は、生計一の19歳以上23歳未満の親族等の年収が増えるにしたがって控除額が段階的に減るしくみです。
※年収188万円を超えると控除対象外となります。
特定親族特別控除の制度のしくみは「配偶者特別控除」と似たような感じのイメージですね。
子どもの年収と特定親族特別控除額を表で整理すると下記のようになります。
扶養している子どもがアルバイト等で給与収入を得ても、親の税負担が急増することを防ぐことで、働き控えによる労働力不足を緩和することが期待されているようです。
年末調整で特定親族特別控除の適用を受けたい場合は、勤務先に「給与所得者の特定親族特別控除申告書」を提出しなければなりません。(様式:給与所得者の基礎控除申告書兼給与所得者の配偶者控除等申告書兼給与所得者の特定親族特別控除申告書兼所得金額調整控除申告書)
これらの改正は、原則として、令和7年12月1日に施行され、令和7年分以後の所得税について適⽤されます。
このため、令和7年(2025年)12月に行う年末調整から源泉徴収事務に変更が生じます。