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[生命保険料控除]子育て世帯に対する生命保険料控除が拡充されます|年末調整

[生命保険料控除]子育て世帯に対する生命保険料控除が拡充されます|年末調整

生命保険に入っていると、その年に払った保険料に応じて所得税・住民税の控除を受けられる制度があります。
これを「生命保険料控除」といい、控除の対象になる保険料・受けられる控除額には上限がありますが、子育て世帯を対象にこの上限の一部が引き上げられることになりました。

この記事では、生命保険料控除の概要と、令和7年税制改正による変更点について解説します。

ここでいう「子育て世帯」とは、年齢23歳未満の扶養親族がいる世帯のことをさします。

ここで解説する子育て世帯への措置は、令和8年分の所得税の計算についてのみ適用されます。

生命保険料控除の概要

納税者が生命保険料等を支払った場合には、年末調整や確定申告の際に一定の金額の所得控除を受けることができ、これを「生命保険料控除」といいます。

生命保険料控除は、生命保険の種類ごとに以下の3種類があり、それぞれについて払い込んだ保険料額に応じて控除を受けることができます。

  1. 一般保険料控除(一般の生命保険料に対する控除)
  2. 介護医療保険料控除
  3. 個人年金保険料控除

契約時期の違いにより新契約と旧契約とに区分され、それぞれ異なる計算式で控除額を算出します。

※新契約とは平成24年1月1日以後に締結した新生命保険契約等、介護医療保険契約等及び新個人年金保険契約等のことを指し、旧契約とは平成23年12月31日以前に締結した旧生命保険契約等及び旧個人年金保険契約等のことを指します。

※保険期間が5年未満の生命保険等の中には、控除の対象とならないものもありますのでご注意ください。

所得税においては、上記の3種類の保険料に対して計算した各保険料控除の合計額(合計12万円)の控除を受けることができます。

生命保険料の種類や新旧の区分がわからなくても、保険会社から届く「生命保険料控除証明書」に必ず書かれています。控除証明書を見ればわかるのでご安心ください。

保険料控除額

所得税の生命保険料控除の控除額の算出方法は、下記の図表の通りです。

一般生命保険料控除、介護医療保険料控除、個人年金保険料控除のそれぞれの保険料について控除が受けられます。

下記①から③の図表をもとに計算した各保険料控除の合計額が、保険料控除額となります。(ただし、控除は最大で12万円なので、合計額が12万円を超える場合でも、控除額は限度額である12万円となります。)

①[新契約]保険料控除額

年間の支払保険料等1控除額
20,000円以下支払保険料等の全額
20,000円超 40,000円以下支払保険料等×1/2+10,000円
40,000円超 80,000円以下支払保険料等×1/4+20,000円
80,000円超一律40,000円
  1. 支払保険料とは、その年に支払った金額から、その年に受けた剰余金や割戻金を差し引いた金額です ↩︎

②[旧契約]保険料控除額

年間の支払保険料等控除額
25,000円以下支払保険料等の全額
25,000円超 50,000円以下支払保険料等×1/2+12,500円
50,000円超 100,000円以下支払保険料等×1/4+25,000円
100,000円超一律50,000円

③[新契約と旧契約の両方]新旧両方に保険料控除の適用を受ける場合の控除額

新契約と旧契約の両方について保険料控除を受ける場合の控除額は、上記①②に関わらず、下記ABで計算した金額の合計額となります。(控除限度額は40,000円)

  1. 新契約の支払保険料について①の図表により計算した金額
  2. 旧契約の支払保険料について②の図表により計算した金額

旧契約の保険料だけで控除の適用を受ければ、控除額は最大5万円ですが、新契約と旧契約の両方を生命保険料控除の対象にすると、適用限度額が4万円になってしまう、ということです。

ですので、旧契約だけを対象として計算した方が有利になる場合は、旧契約のみを控除の対象としても良いこととなっています。


さて、所得税については、一般生命保険料控除、介護医療保険料控除、個人年金保険料控除の各保険料に対する控除を足して、最大で合計12万円の控除を受けられます。

このうち「一般の生命保険料(新契約)」について、今回の見直しにより控除額が2万円上乗せされ、最大6万円に引き上げられます。(子育て世帯に限る)

子育て世帯の保険料控除の拡充|改正のポイント

改正内容

2025年度(令和7年度)税制改正による改正内容は、23歳未満の扶養親族がいる場合に、一般生命保険料控除の上限額が4万円から6万円に引き上げられるというものです。

具体的には以下の通りです。

  1. 23歳未満の扶養親族がいる場合には、所得税において新生命保険料に係る一般生命保険料控除の適用限度額が、現行の4万円から6万円に引き上げられます
  2. 旧生命保険料及び上記①の適用がある新生命保険料を支払った場合には、一般生命保険料控除の適用限度額が、現行の4万円から6万円に引き上げられます
  3. 一般生命保険料、介護医療保険料、個人年金保険料の合計適用限度額は現行の12万円から変更ありません

【改正後】[新契約]23歳未満の扶養家族がいる世帯の保険料控除額

年間の支払保険料等控除額
30,000円以下支払保険料等の全額
30,000円超 60,000円以下支払保険料等×1/2+15,000円
60,000円超 120,000円以下支払保険料等×1/4+30,000円
120,000円超律60,000円

※一般生命保険料控除、介護医療保険料控除、個人年金保険控除の合計適用限度額は改正前と変わらず、12万円です。

各保険料控除の合計適用限度額は、現行の12万円から変わらないため、改正前からすでに限度額に達している場合は改正による影響がないということだね。

適用時期

この措置は、令和8年(2026年)分の所得税についてのみ適用されます。

・1年限定の時限的な措置です。
・住民税は対象外です。

この控除額拡充措置は、子どもの教育費用や万が一のときの遺族の生活費を備える自助のための環境を整備し、生活の安定を確保する「子育て支援」に関する政策税制ということですが、1年限りの時限措置で、しかも増える控除は最大でも2万円ということなので、負担軽減という視点で見れば効果は限定的だと感じます。

生命保険協会などが、この子育て世帯対象の生命保険料控除の2万円上乗せ措置の恒久化を要望していますが、実際に恒久化されるかどうかは現時点ではまだわかりません。

今後、措置が恒久化されるかどうかや、住民税にも適用されるかどうかなど、動向に注目していきたいところです。

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