

令和7年(2025年)10月より、雇用保険の「教育訓練休暇給付金」が創設されました。
教育訓練休暇給付金は、スキルアップや資格取得のために勉強や通学をするときに、離職することなく教育訓練に専念するため、休暇期間中の生活費を保障する制度です。
目次
教育訓練休暇給付金は、労働者が教育訓練を受けるために自発的に休暇(無給)を取得した場合に、賃金の一定割合が雇用保険から支給される制度です。
雇用保険法の改正によって新たに創設され、2025年10月から施行されました。
これまでは資格取得やリスキリングのために長期的な教育訓練を受けるためには、長期間仕事を休むか退職するしかなかったのが、この制度ができたおかげで経済的な不安が減り、仕事を辞めなくてもスキルアップができるようになったんだね。
教育訓練休暇給付金を受給できるのは、以下の2つの要件を両方満たす在職中の人です。
(*1)原則、11日以上賃金の支払いの対象となった月が算定対象
(*2)離職期間があっても、離職から12か月以内であり、失業手当等を受給していなければ、加入期間を通算できる(言いかえると、基本手当等を受給していた場合は通算できないということ)
以下に該当する人は対象外です。
教育訓練休暇給付金の支給対象となる休暇は、以下の3つの要件をすべて満たす休暇です。
従業員本人が「自発的に」希望して休暇を取得していることが要件だから、会社からの指示や命令で受ける教育訓練はこの給付金の対象にはならないよ。
教育訓練休暇給付金の給付額は、失業手当(基本手当)の算定と同じ方法で計算され、同じ額が支給されます。
原則として休暇開始前6か月の賃金に応じて算定される賃金日額を基に給付日額が算定され、給付日額に休暇日数を乗じて給付額が算出されます。
賃金日額=休暇開始前6か月の収入÷180日
給付日額=賃金日額×給付率(およそ50%~80%(60~64歳は45%~80%))
※給付日額は、休暇開始前の賃金や年齢に応じて決まります。
※賃金日額には、上限と下限があり、毎年8月に「毎月勤労統計」の平均定期給与額の増減により変更されます。
教育訓練休暇給付金の受給期間の範囲は、休暇を開始した日から1年間です。この期間中に取得した教育訓練休暇の日数に応じて支給されます。
支給日数には上限があり、雇用保険に加入していた期間(被保険者であった期間)に応じて決まります。(90日・120日・150日のいずれか)
加入期間 | 5年以上10年未満 | 10年以上20年未満 | 20年以上 |
---|---|---|---|
所定給付日数 | 90日 | 120日 | 150日 |
この上限に達した時点で受給は終了です。
受給期間内と給付日数の範囲内であれば、複数回にわたって休暇を取得した場合でも給付が受けられます。
ただし、教育訓練休暇を取得した期間内に、仕事をしたり、有給休暇をとったり、育児休業など教育訓練休暇以外の休暇を取得した場合は、その日は給付の対象外となります。
給付日数が残っていても、休暇開始から1年を過ぎていれば給付は受けられません。(妊娠出産育児、疾病、負傷等の理由でハローワークによって受給期間の延長を認められた場合を除く)
教育訓練休暇給付金をもらうためにはハローワークでの認定手続きが必要です。(事業主がハローワークに申請します)
認定方法は下記の通りです。
手続きの流れは以下の通りです。
被保険者が事業主に教育訓練休暇給付金を受給したい旨届け出る
事業主が事業所管轄のハローワークに届け出る
ハローワークが確認し、結果を通知する
被保険者からハローワークに支給申請を行う
ハローワークが申請を確認、受理し、受給資格の決定を行う
被保険者は、30日ごとに教育訓練休暇取得状況を申告する
教育訓練休暇給付金が支給される
教育訓練休暇給付金に関する大きな注意点は2つあります。
教育訓練休暇給付金の対象となるのは、就業規則等で定められた教育訓練休暇制度に基づいて取得した休暇です。
ですので、そもそも勤務先に教育訓練休暇制度がない場合は、教育訓練のために休暇をとった場合でも受給できません。
失業手当(基本手当)とは、離職したときに離職前の2年のうち通算して12か月以上雇用保険に加入していれば受け取れる給付金です。
しかし、教育訓練休暇給付金を受給すると、被保険者期間がリセットされます。
これにより、一定期間は失業給付等の雇用保険被保険者期間を要件とする給付金を受けることができなくなります。(休暇開始前の被保険者期間は、失業手当の支給対象外となります。)
※ただし、以下のいずれかに該当する場合は、離職した際の被保険者期間に休暇開始前の期間も含めて算定されます。
解雇等を予定している労働者に対して、教育訓練休暇給付金の教育訓練休暇を取得させることは認められません。虚偽の届出を行った場合、罰則の対象となります。
教育訓練休暇給付金とは
【対象】雇用保険の加入期間が一定以上ある人
【要件】離職せずに教育訓練を受けるために、自ら希望して無給の休暇(就業規則等に規定された休暇)を取得
【要件】その教育訓練休暇を開始した日から1年以内に30日以上教育訓練休暇を取得
【支給日数】被保険者期間に応じて、教育訓練休暇を取得した日の給付金が受給できる