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2020年1月から、給与所得控除と基礎控除の金額が改正されました
2020年1月から、給与所得控除と基礎控除の金額が改正されました。
この改定は、働いてお給料をもらう人たちの給与・税金に影響のある改定です。
この記事では、給与計算や所得税に詳しくない方でも、身近なこととしてとらえていただけるように
わかりやすくまとめていきます。
今回の改定で影響を受ける人とは?
最初に結論をいうと、今回の改定は
会社員等のお給料をもらっている(給与所得がある)人、全員に関係がありますが、影響を受けるのは高所得者に限られます。
ここでいう高所得者とは、具体的には「給与収入が850万円を超える人」です。
給与収入が850万円未満の方には、ほぼ影響はありません。
どういうことなのか、これから詳しく説明していきます。
給与収入とは?月給?年収?手取り額?
改正内容のお話にうつる前に、まずはもっと基本的なところからおさえていきたいと思います。
突然ですが、「給料いくら?」と聞かれたら答える金額は、総支給額ですか?それとも手取り金額でしょうか?
友人同士の会話の中では、どちらを答えても良いですが、税務上はきちんとした定義があります。
税制関係の資料や説明を見ていると、「給与収入」やら「年収」やら「収入金額」やら「所得金額」やら、一見同じ意味のように感じる似たような言葉がいくつか出てきます。
これらの違い、正確にわかりますか?
所得税関連の説明によくでてくる「給与収入」とは、つまりこういうことです!
(*2)総支給額とは、税金やら社保やら引かれる前の額面総額
「給与収入」の意味をおさえたところで、ようやくこの記事の本題である、給与所得控除と基礎控除の金額改正についてまとめていきます!
2020年からの給与所得控除・基礎控除の改正内容とは?
1給与所得控除額の改定:多くの人は10万円減額
給与の収入金額から、この「給与所得控除額」を差し引いて、給与所得の金額が算出されます。
給与所得控除額は 収入金額によって金額が異なりますが、基本的には10万円引き下げられます。
収入金額 | 2019年までの給与所得控除額 | 2020年以後の給与所得控除額 |
1,625,000円まで | 650,000円 | 550,000円 |
1,625,001円から1,800,000円まで | 年収×40% | 年収×40%-100,000円 |
1,800,001円から3,600,000円まで | 年収×30%+180,000円 | 年収×30%+80,000円 |
3,600,001円から6,600,000円まで | 年収×20%+540,000円 | 年収×20%+440,000円 |
6,600,001円から10,000,000円まで | 年収×10%+1,200,000円 | × |
10,000,001円以上(上限) | 2,200,000円(上限) | × |
6,600,001円から8,500,000円まで | × | 年収×10%+1,100,000円 |
8,500,001円以上(上限) | × | 1,950,000円(上限) |
- 給与所得控除が多くの方にとって10万円引き下げられます。
- 給与所得控除の上限額が220万円から195万円に引き下げられました。
上限額の対象者も「年収1000万超」から「年収850万円超」へと変更になります。 - 850万円超でも、子育て・介護世帯の場合は負担増が生じないよう配慮されます。詳しくは次に説明します。
2所得金額調整控除の創設
①で記した通り、給与収入が850万円を超える場合の給与所得控除額が195万円に引き下げられますが、子育て・介護世帯の負担軽減等を目的に、所得金額調整控除が創設されます。
対象となるのは年収が850万円を超え、かつ以下いずれかに該当する場合です。
- 本人が特別障害者である場合
- 23歳未満の扶養親族がいる場合
- 特別障害者である同一生計配偶者または扶養親族がいる場合
3基礎控除の引き上げ
2019年末までは、だれでも一律で38万円だった基礎控除ですが、2020年1月からは合計所得金額に応じて4段階に細分化されました。
ん?合計所得金額?なにそれ?と思ったあなたへ
会社からのお給料以外にも収入(不動産所得や一時所得等)がある方は、すべての収入の合計額と考えてくださいね。
- 高額所得者を除き、基礎控除額は10万円増額され48万円となります。
※給与所得控除の引き下げ幅10万円と合わせると、多くの方に影響はありませんが、年収が2,400万円を超える方には影響があります。
▼2020年度以後の基礎控除額
合計所得金額 | 基礎控除額 |
2,400万円以下 | 480,000円 |
2,400万円超 2,450万円以下 | 320,000円 |
2,450万円超 2,500万円以下 | 160,000円 |
2,500万円超 | 0円 |
合計所得金額が2,400万円を超える方は、基礎控除が減るので、実質増税となります。
そもそも給与所得控除、基礎控除って何?
ざらーっと給与所得控除と基礎控除の改定内容を書いてきましたが、そもそも「給与所得控除?なにそれ?おいしいの?」状態の方にとっては、まったく意味不明だったと思います。
ということで、基本の部分を説明していきます。
給与所得控除とは
給与所得控除とは、ザックリいうと会社員にとっての必要経費のようなものです。
自営業の個人事業主等は、収入から様々な経費を差し引くことができるのに、会社員等の給与所得者はできない。それは不公平。
だから会社員には、個人事業主の経費と同じようなイメージの「給与所得控除」というものがあり、収入から「給与所得控除」を経費として差し引くことができるのです!
個人事業主と違うのは、給与所得控除の金額は自分の自由にならないところですかね。
個人事業主みたいにいろいろな領収証を経費にする、とかはできないです。当然ですが。
とにかく、会社からもらった給料額にそのまま課税されるのではなく、[必要経費=給与所得控除] を差し引くことができる、ということです。
この経費(給与所得控除)を給与収入から差し引いたものが「給与所得」です。
「給与所得」ということばも覚えておくと良いと思います。
所得控除の金額が多ければ多いほど、「課税所得金額」(納める税金の計算の基準となる)が減るので、まぁ早い話が納める税金が少なくなります。が、話がややこしくなるので所得控除についてこの記事ではこれ以上は触れません。
節税に興味のあるかたはもっと深く知識をつけると良いと思います(^^)
基礎控除とは
基礎控除とは、所得控除のうち全員一律で差し引くことができる控除のことです。
早い話が、誰でも無条件でこの基礎控除分は控除しますよ、ということです。
各種の所得控除を差し引き、その金額が課税所得となり
課税所得に応じで税金が発生する、という仕組みです。
・給与所得-所得控除(基礎控除など各種)=課税所得
2019年末までは、基礎控除額は誰でも一律で38万円でした。
(ちなみに住民税の基礎控除額は33万円でした。ややこしくなるのでこの記事では住民税の話はしません。)
それが2020年1月からは、合計所得金額に応じて4段階に細分化されました。
わかりやすく言うと、たくさん稼いでいる方の基礎控除額は減らされた、という感じです。
今回の改正は、年収850万円超えのサラリーマンは増税となりますが、逆に 個人事業主やフリーランスの方は恩恵をうける(減額された給与所得控除はもともと適用されず、増額となった基礎控除は適用されるので)内容ですね。
まとめ
- 給与収入850万円以下の給与所得者にとっては、いままでと変わりない
(給与所得控除が一律10万円減、基礎控除が10万円増で、プラスマイナスゼロ) - 給与収入が850万円を超える人にとっては、増税となる
- ただし、給与収入850万円超える人でも、子育て世帯・介護世帯(以下に該当する場合)は、負担増とならないよう調整される
・23歳未満の扶養親族を有する
・特別障害者控除の対象である扶養親族等を有する - フリーランスや個人事業主(自営業)として働いている人等は、そもそも給与所得控除がないため、基礎控除が10万円増額となることでその分メリットとなる。
給与所得控除と基礎控除の改正によって、いくら増税になるのか?算出してみました。目安としてご覧ください。
給与収入 | 控除額の増減 | 増税額 |
850万円以下 | ±0 | 0 |
850万円超~1,000万円未満 | 0 ~ -150,000円 | 0 ~ 45,000円 |
1,000万円 | -150,000円 | 45,000円 |
1,000万円超~2,595万円 | -150,000円 | 45,000円以上
※年収や控除合計額によって額は異なりますが、増税となります。 |
2,595万円超~2,645万円以下 | -310,000円 | |
2,645万円超~2,695万円以下 | -470,000円 | |
2,695万円超 | -630,000円 |